話によると
「あ~、それ、話によると担任、気に入らない生徒に対してはそういうことをするらしいってのは、伝わってきてるね」
翌日、会社に行って
「気に入らないからって、マジで子供か……」
まあ確かに、俺だって、気に入らない顧客に対しては思うところがないわけじゃないよ? わざとそういうことをしてやりたい気持ちになったりはする。
けどな、自分の仕事は仕事として割り切るのが<まっとうな社会人>ってもんだろうが。
しかし同時に、かつての羅美の振る舞いが嫌われる原因になったのなら、それを招いたのは羅美自身でもあるわけで、普段の振る舞いの大切さを思い知らされる出来事でもあった。
とは言え、
「三学期に入ってからはおとなしくしてたらしいのになあ……」
牧島の娘からの報告を信じるならそういうことのはずだが、それでも嫌われてたのか……
情けない気分に浸ってると、牧島は、
「そうだよ。三学期に入ってからの羅美ちゃんは、愛想は良くなかったかもしれないけど真面目にやってた。それは娘も太鼓判を押してる。そうやって心を入れ替えて立ち直ろうとしてる子の足を引っ張るのが教師の役目ってわけじゃないでしょ? だから、もし、わざとだったのなら悪いのはあくまで担任。『相手に原因があるから!』なんてのは相手の所為にしてるだけ。羅美ちゃんのことは、ちゃんと労ってあげてよ?」
そうきっぱりと言ってくれた。
「ああ、もちろんだ」
確かに、
『自分の非常識な振る舞いが自分に返ってくる』
のと、
『ムカついたら何をやってもいい』
ってのは別の話だ。他者に対して何一つ不快な思いをさせることのない人間なんて、まずいない。そんなことは、ネットで他者を不快にさせるコメントを発信してる奴らの多さだけでも分かるはずだ。そんな奴らでも、自分のコメントを理由に攻撃されたりしたら被害者ぶるだろう? 嫌だろう? だったら、心を入れ替えて真面目にやろうとしてる人間に対して嫌がらせをするようなのがどれほどふざけてるか、分かるだろうに。
とは言え、今回の件については元担任は『うっかりだった』と弁明してるらしいし、わざとだったという証拠もないし、書類も無事に届いたから、こっちとしてはもうとやかく言わないでおく。
羅美も、
「うちの所為なのかなあ……」
って、かつての自分の行いを反省してたしな。
なんて、人生の中でもそうそう経験しないようなことが立て続けに起こったりしつつも、羅美は無事、通信制の高校に入学できたのだった。
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