黒歴史
学校では、羅美以外にも二十人ほどの希望者らしきのが来てた。で、羅美のように制服を着て保護者同伴で来てるのだけじゃなく、いかにも<ヤンチャ>してたんだろうなって感じの、しかも明らかに二十歳過ぎてそうなのもいた。それどころか、俺とそんなに歳も違わないだろうってのも……
……ん? こいつ、どこかで……?
と思ったら、そいつが俺の顔を見るなりハッとなって、
「先輩!」
とか声を上げやがった。瞬間、俺も思い出す。こいつ、俺が高校通ってた時の後輩だ……! 名前は確か、
「工藤か……!?」
俺も思わず声に出ちまった。すると<工藤>は、
「そうっす!
笑いながら言いやがる。てか、老けたのはてめえもだろ!
しかも工藤は、羅美を見て、
「もしかして先輩の娘さんっすか? こんな大きな娘さんいたんすね。知らなかったっす!」
とかなんとか。見知った顔がいてテンションが上がったのかもしれないが、
「分かったから、工藤! とにかく静かにしろ。他の方に迷惑だろ!」
俺は工藤を嗜める。
ったく。こいつは俺より二つ下のはずだからアラフォーだぞ? なんだよ『っす』って。いい歳なんだから人前でそういう口調はもうやめろ。完全な仲間内だけならともかく。
と思うんだが、まあ、高校時代に思わず引き戻された感じかもしれん。
「あ、すんません!」
ようやく場所をわきまえた工藤が俺だけじゃなく他の参加者らにも頭を下げてた。<舎弟感>丸出しで。
ああそうだよ。昔の俺は、こういう感じの奴らとつるんでたよ。でもな、俺のは単に親に反発しての<ファッションヤンキー>だったから、あんまガチな悪さはしてなかった。ケンカとかはしたものの、それも同類相手だったしな。ただ、当時のことは俺にとっちゃ、
<思い出したくもない黒歴史>
なんだよ。ヤンキーぶってるクセにラノベとかもこっそり読んでたし。まあ、<オタク>って言われるほどはのめり込んでなかったけどよ。勉強も、なんだかんだと中の中って感じだった。その所為もあって、仲間内からは、
<勉強ができる奴>
扱いではあった。
とは言え世間からはガッツリ<DQN>って目で見られてたのも事実だ。そんな俺だから、羅美にはそれこそ偉そうに言えないんだ。あの頃の俺だって、一歩間違えばもっとヤベえ方向に行ってたかもしれないわけで。
でも、程度は低くても一応は大学も行って、就職もして、過去の自分を恥じて封印して、なんであんなバカなことしてたのかを自分で考えて考えて考えてってしてるうちにあれこれ分かってきたってだけなんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます