ダセえ奴
羅美はさらに俺に話し掛けてくる。
「ウチのやってたことって、何なんだろうな……家でヤられてさ……『もうどうでもいいや』って思って、どうせヤられんなら金になる方がいいと思ってさ。そしたらすっげー金になって、『これ、親なんか要らないんじゃね?』って思ってたんだけどさ、今んなって思ったら、気持ち悪くて気持ち悪くて……なんであんなことできたんだろって思うんだよ……」
夕食のオムライスを食べながら、顔を伏せながら、ものすごく情けなさそうな様子で話す彼女に、俺は、
「俺はそんな経験したことないから羅美がどんな気持ちだったかは分からない。けどな、血が繋がってなくても仮にも<自分の娘>にそんなことをする奴なんざどんな言い訳並べようが絶対に正当化できないってことだけははっきりしてる。誰がそいつらを擁護しようが俺は正しいなんて思わないし許せない。でも、同時に、羅美がしたことも<正しいこと>じゃないと思う。羅美が今、『気持ち悪くて』『なんであんなことできたんだろ』って思うなら、それは間違ってたんだと思うんだ。
ただ、それを今では『なんであんなことできたんだろ』って思うなら、もういいと俺は思う。羅美は自分のしたことをこれからずっと引きずっていくことになるだろう。それが<罰>なんだ。一生付きまとう罰だとは思うが、自分のしたことを悔やめるなら、意味はあると俺は思う。羅美がそんな風に思える奴だから俺はこうして力になろうと思える。羅美は間違ったことをしたけど、今の羅美は間違ってないと俺は思うんだよ」
なるべく彼女に伝わるようにとあれこれ考えながら話したせいで、正直、言ってることがまとまってない気もしたが、少なくとも今の時点ではこれが俺の考えなんだ。
『羅美は間違ったことをした。その罪は一生ついて回る。でも、今の羅美は間違ってない』
俺は本当にそう思ってる。
「そうだよな? あれはダメなことだったんだよな? ウチがあれを気持ち悪いって思うのは、変じゃないよな?」
「ああ、変じゃない。好きでもないキモいオッサンとヤるなんてのは、気持ち悪くて当然だ。羅美の感覚は間違ってない」
これも、金で女子高生や女子中学生を買うのを当然だと思ってる奴らは反発するだろうけどよ。男の俺から見ても気持ち悪りいんだよ。その性根がな。
『若い女とヤりたい!』
って気持ちは俺にもないわけじゃない。
『金で自分の体を売ってくる奴を買って何が悪い!』
とか言いたくなる気持ちも理解できないわけでもない。けどな、『それでも』なんだ。
『子供相手に何やってんだ? お前? ダセえ奴』
って思うんだよ。嘘偽りなくな。
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