『どうしよう……』と思わされることの連続
妊娠検査薬で陽性が出た以上、そのままにしておくわけにはいかない。まずは少年課の溝口と児童相談所の倉城に連絡を取る。
「古隈さん、あんたまさか……!」
溝口はそう口にしたが、
「下衆な勘繰りはやめてくれ。時期が合わねえよ。はっきりした診断はこれからだが、間違いなく俺のところに転がり込む前の話だ」
きっぱりと言わせてもらう。ここでおたおたしたら余計に怪しまれるかもしれないしな。
で、近所の産婦人科に歩いて向かったんだが、途中、何度も羅美は立ち止まった。
「なあ、妊娠検査薬なんてそんなに正確じゃないよな…? 間違いだってこともあるよな……? うち、何度も
往生際悪くそんなことを訊いてくる。
なるほど何度も堕胎したら不妊になるみたいな話は俺も聞いたことがある。でもそれも『絶対』ってわけじゃないだろう。そもそも俺も羅美も専門家じゃないんだから本当のところなんか分かるわけない。
だからこそ俺は、
「ああ、そうかもな。でも、それを確かめるために今から診てもらうんだ。諦めろ」
とバッサリ切り捨てる。その上で、
「ここで躊躇して結論を後回しにしたって何の解決にもならない。だったらさっさと診てもらって、間違いだったら間違いだったと確定してもらうのが大事だ」
とも諭す。なのに羅美は、
「でも……!」
とか言って食い下がろうとする。
「悪いが、羅美、俺はお前に甘えてもらうことは一向に構わないが、お前を『甘やかす』つもりはないんだよ。どういう結果になろうが、俺はお前を見捨てないし受け止める。だからお前も腹を括れ。なんだかんだ言ったって、生きるってのはこういう『どうしよう……』と思わされることの連続だ。お前はまだ子供で、できることも少ないから、俺が力になるんだよ。俺を信じろとは言わん。俺を利用したらいい。俺の部屋に転がり込んだ時みたいにな」
一歩も引かない俺に、羅美は、
「分かったよ……くそう……」
なんて悪態を吐きながらもついてきた。もっとも、その後もやっぱり何度も立ち止まったけどな。その度に俺は彼女が歩き出すまで待ったよ。
そんな調子で、普通に歩いたら十分と掛からない道を三十分以上かけて歩いて、ようやく女医がやってる産婦人科で診てもらった結果。
「妊娠ですね。おそらく三ヶ月目に入っています」
とのことだった。
「……」
羅美はそれこそ、青いのを通り越して真っ白な顔になって、ガタガタと震えてた。
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