コグマと大虎 ～捨てられたおっさんと拾われた女子高生～

俺はカッコ悪いよな……

『カッコつけんな。オッサンのクセに……！』

　顔を背けながらそう言う羅美に、俺は、

「そうだな。俺はカッコ悪いよな……」

　と返す。すると羅美は、

「ああ、カッコ悪いよ！　オッサンだしこんな変なクルマ乗ってるし服もダセえし部屋もしょぼいし！」

　とか言った後、

「でも、ウチはそういうの、嫌いじゃない……」

　って付け足してくれた。顔を背けたままで。

「ははは、それは光栄だ」

　言いつつさらに国道を走らせる。そして、

「ところで、そろそろ、腹減らねえか？」

　話題を切り替えた。そこに羅美も、俺の方を見て、

「ファミレスがいい。お父さんも、いっつもドライブん時にはファミレスに連れてってくれたんだ」

　だと。

「おう、ちょうどそこにファミレスがあるから入ろう」

　まあ、信号待ちで止まった時にファミレスの看板が見えたから訊いたんだけどな。そんなこんなで、今度はファミレスの駐車場に入る。

　まだ昼前だったこともあってか、混んでる様子はなかった。ちょうどいい。寒空の中でこいつを走らせてると、体が熱を欲するのか、けっこう腹が減るんだよ。

　いわゆる＜オープンカー＞なこともあって、こいつは当時にはまだ珍しかったらしいハンドルロック機能がある。キーを抜くとハンドルがロックされて動かせないってヤツだ。それに加えてこいつには、フルレストアの際に盗難防止用の細工として、コンソールの下の、普通にしてたら見えないところにスイッチがあって、それを切るとまったくエンジンがかからないようにもできるようになってた。＜セル＞が回らなくなるんだ。

　まあ簡単な仕組みだが、効果的でよ。以前、バッテリーを直結にして盗もうとしたのがいたんだが、どうやってもエンジンがかからねえってんで諦めたらしいことがあった。俺がメシを食ってる間にだ。興味のねえ奴にはただのポンコツだが、マニアには高値で売れるってのを知ってたんだろう。しかもメシ食ってるニ十分くらいの間でだから、手慣れた奴の犯行だろうな。

　でも、高値って言ったってたかだか百万ちょいくらいだぞ？　軽自動車の新車の方が今は高えだろ。ご苦労なこった。

　窃盗未遂および器物損壊ってことで警察には被害届を出しておいたが、犯人が捕まったかどうかは知らん。

　そんなわけでハンドルロックを掛けた上でスイッチも切って、羅美と一緒にファミレスに入る、

「～♪」

　鼻歌を歌いながら店に入る羅美は、どうやら機嫌を直してくれたようだ。

「うお～！　あったけえ！」

　防寒はばっちりのはずだがやっぱ外の空気が冷たいからな。ホッとするんだろう。