大虎
「え、と。あなたが通報者?」
二人組の警官のベテランそうな方がそう尋ねてくる。ただ、少々めんどくさそうな態度がカチンときたものの、そこは我慢。
『ち……っ! ハズレか……』
警官ってのも人間だからな。すごくちゃんと対応してくれるのもいれば、明らかにやる気ねえのもいる。今回はどうやらハズレだったようだ。もうその時点で嫌な予感がしてたが、
「あ、マジかよオッサン。犬呼んだのかよ? 信じらんねえ」
俺の背後で風呂から出てくる気配と一緒にそんな声が。
『信じらんねえ』のは俺の方だっての! 振り返ったらそこにいたのは、すっぽんぽんで髪を拭いてるギャルの姿。
なるほど、男好きのする体つきってやつか……!
って、そうじゃねえ!
だが、俺が唖然としてると、
「お前! <大虎>!? またお前か!?」
先に声を上げたのは警官の方だった。思わずそっちに視線を向けると、ベテランそうな方の警官は露骨に嫌そうな
でもようやくそこで俺も、
「こいつが勝手に家に上がり込んでんだ! 不法侵入でもなんでもいいからとにかく連れてってくれ! 俺は関係ない! 被害者なんだ!」
と口にできた。<未成年者略取>じゃないってことをアピールするために。
なのに警官は、一目で分かるくらいに及び腰で、対して『大虎』って呼ばれた女は、頭を拭いていたタオルだけを手にして素っ裸のままで、
「なんだよ? 大声あげんぞ? 『警察官に襲われてる~!』ってよ」
とんでもなく堂々とした態度で俺を押し退けて警官の前に立った。
「分かった…! 分かったからやめろ、大虎……!」
ベテラン警官はすでに逃げ腰だった。しかも、俺に対して、
「え、と…
とかふざけたことを言いだした。
「ちょ…! なんだよそれ! それが警察の言うことか!? 俺はこいつに勝手に家に上がられた被害者なんだよ! 助けろよ!」
詰める俺に、
「まあまあ落ち着いて。近所迷惑ですからね。とにかく彼女は大丈夫なんです。ですから協力をお願いします。一晩すれば帰ると思いますから。では、我々はこれで」
なだめようとしてか酷く
「いいんですか? 先輩」
若い警官がそう口にして、
「ああ、ありゃ<大虎>だ。関わっちゃいけない奴なんだよ」
ベテランらしい警官が言いながら遠ざかっていくのが分かったのだった。
なんだこりゃ……!?
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