第7話

 (※グリフ視点)


 なんてことだ……、まさか、遺産が相続されないなんて……。


 そんなこと、考えもしなかった。

 僕の人生設計が、大きく狂ってしまった。

 遺産を相続すれば、あとは遊んで暮らせると思っていたのに、まさかこんなことになるなんて……。


 しかも、遺産は全部、あのクソ女に相続だと?


 まったく……、ふざけてるとしか言いようがない。

 あいつは、この家の者でもないのに、猫越しに、あいつに遺産を相続するなんて、何を考えているんだ、あのジジイは……。


 ほかの家族が、僕より少し取り分が多くなるくらいのことは、覚悟していた。

 しかし、こんなのは、まったくの予想外だ。

 到底許されることではない。

 僕たちは遺産を相続できずにショックを受けている中で、あいつだけ遺産を相続して遊び惚けるなんてこと、あっていいはずがない。


 僕はもう、行動を起こす覚悟を決めていた。

 しかし、具体的にどのように遺産を奪うのかが問題だ。

 とりあえず、三つの方法を思い付いた。


 一つ目のやり方としては、手っ取り早く、あの女を亡き者にする。

 そうすれば、遺産を相続することができる。

 しかし、その場合はあの女が言っていた通り、一人当たりの取り分がかなり少なくなる。

 一生遊んで暮らせるほどの額はない。


 しかし、二つ目のやり方ならその心配もない。

 それは、一つ目のやり方を実行する前に、相続人の人数を減らすことだ。

 遺産を相続するうえでは、家族は敵でしかない。

 何人か減らせば、その分取り分が増えるから、一生遊んで暮らせる額にもなる。

 しかしこの方法は、おそらくほかの家族も考えている。


 この家に住む者は、ずっと遺産が転がり込んでくるのを待っていた連中だ。

 遺産のためなら、家族も敵とみなし、排除しにかかるだろう。

 この方法は、時間がかかる上に、もたもたしていると、自分が殺されるリスクもある。

 しかし、大金を手に入れることができる。


 つまり、まとめると、こういうことになる。

 

 一つ目の方法だと、金を手っ取り早く手に入れることはできるが、取り分が少なくなる。

 そして、二つ目の方法だと、時間がかかってしまうため、自分が殺されるリスクがあるものの、取り分は多くなる。

 

 僕はどちらの方法を選ぶか迷っていた。

 しかし、ここで第三の方法を思い付いた。

 まずは、第一の方法で、手っ取り早く金を手に入れる。

 少額の遺産が、家族にそれぞれ分配される。

 そして、そのあとで、ほかの家族の金を、盗めばいいのだ。


 一度遺産が分配されれば、殺されるリスクは格段に低くなる。

 ほぼゼロだと言ってもいい。

 なぜなら、殺してその人物から金を相続しようとしても、税金で大半を失ってしまうからだ。

 そんなことをしても取り分が少なすぎるので、割に合わない。


 しかし、盗むだけなら、同じ屋敷に住んでいるから、そう難しくない。

 一気に盗んで逃げるも良し、バレないように、時間をかけて少額ずつ盗むも良し。

 しかも、非課税だ。


 さあ、どうする……。

 どうやって、遺産を手に入れようか……。

 いろいろと考えたが、どうも面倒だな。

 一つ目のやり方が、時間もかからないし、簡単だ。

 一生遊んで暮らせるほどの額はないが、まあ、それなりに大金だ。

 

 ほかのやつらに殺されるリスクを考えると、手っ取り早くあの女を殺して、遺産を分配するのが堅実なやり方だともいえる。


 ……よし、これでいこう。

 あの女を亡き者にしてやる。


 善は急げだ。

 僕はさっそく、行動を開始しようとした。

 しかしそこで、ある人物が僕の部屋を訪ねてきた。


 その人物は……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る