第3話
私は手紙に記されていた日時に、ラフレーム家の屋敷へ到着した。
広い部屋に入ると、私の婚約者を奪ったアネット、及びラフレーム家のみんなの視線が、一斉にこちらを向いた。
「おい! なんでこのクソ女がここに来るんだ! 今日は、遺産の相続のことで集まったんだろう!?」
最初に叫んだのは、グリフだった。
まさか、また彼に会うことになるなんて、思ってもみなかった。
どうせ最後だからと思って、前回会った時に本音をぶつけたので、少々気まずい。
「そうだ、こんなのおかしい! どうして彼女がここにいるんだ!」
非難するようにそう言ったのは、私の元婚約者のダリルである。
彼の隣には、寄り添うようにアネットが座っていた。
そして、そのアネットも、私の方を見て……。
「そうよ! どうして彼女がここにいるの!? 彼女はもう、ラフレーム家の婚約者ではないのよ!」
彼女は、最後の言葉を特に強調するように言った。
私が財産目当てだという嘘の噂を流して婚約者を奪ったくせに、よくそんなことが言えるわね。
まあ、そんな嘘の噂を信じる方も信じる方だけれど……。
「これから、大事な遺産相続の話があるのよ! 部外者のあなたは出て行って!」
お義母様は私を睨みつけながらそう言ったが、私は反論した。
「いえ、私は、そこにいる弁護士さんに呼ばれてきたのです。なんで私まで呼ばれたのか、見当もつかないのですが……」
「どうして彼女が呼ばれるんだ! こんなの、何かの間違いだ! うちは代々、遺産は家族にしか相続しない決まりなんだ! それに、どうして──」
「お静かにお願い致します。これで皆さんお揃いのようですので、そろそろ始めたいと思います」
お義父様の言葉を遮ったのは、弁護士だった。
その弁護士の手元には、おじいちゃんが書いた遺書がある。
彼は、その遺書を読み上げ始めた。
さっきまで騒いでいた皆も、遺産の相続の話になると、真剣な顔つきになって聞いていた。
そして、いよいよその時が来た。
「彼の財産を相続するのは──」
皆が息をのむ。
弁護士が語る言葉に、誰もが集中していた。
「彼の財産を相続するのは、スージーさんです」
「……はい?」
思わず、間抜けな声が出てしまった。
弁護士の言葉を聞いて、皆の視線が一斉にこちらを向いた。
えっと……、私ですか?
どうしてなのでしょう……。
あのぉ、皆さん、顔が怖いですよ。
どうか、落ち着いてください。
それと、皆さんがこちらを見ている目に、殺意が宿っているように感じるのは、私だけでしょうか?
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