第2話:レズビアンの幼馴染

 高校生になり、初めて幼馴染の女の子にカミングアウトをした。彼女の名前は西野にしの望海のぞみ。彼女なら打ち明けても受け入れてくれる。そう信じていた。

 彼女は俺のカミングアウトを聞くと、目を丸くして言った。「実はうちも女の子が好きやねん」と。


「そんな気がしたから打ち明けた」


「……マジで? うち、そんな分かりやすい?」


「まぁ……俺がそうやから分かるんかもしれん。幼馴染やし」


「うちは全然気づかんかったけど」


「昔から鈍感やからなぁ」


「……親には言うたん?」


「言うた」


「ええなぁ……うちは言えへんわ……けど、ほっとした。……不安やったんや。一人ぼっちな気がして。頭ではわかってたけどな。一人やあらへんって。けど……身近にはおらへんから」


「きっと、隠れとるだけや」


「せやな。……うん。せやな。で?」


「ん?」


「ハルくん、どんな人がタイプなん?」


「あぁ?」


「うちはな、一個上の吹奏楽部の櫻井先輩」


「あー……あの人な……」


 望海が好きだと言った先輩は、当時俺が好きだった梅沢うめさわという男子の恋人だった。


「……マジか……失恋したわ」


「記念に飯食いに行くか」


「なんやねん記念って……酷いわぁ」


「ラーメンでええ?」


「うち、女の子やぞ? 奢るなら甘いものやろ」


「お前そういうキャラちゃうやろ」


 などと笑い合いながら、放課後に二人でラーメン屋に入った。

 彼女は泣きながら麺を啜り、食べ終わると、彼女は俺を見ずに言った。


「もう恋愛出来へんって諦める日が来たらさ、うちら、結婚せぇへん?」


 彼女は俺にとってパートナーのような存在だった。もしも異性婚が義務だったら、迷わず彼女を選んでいた。そう言えるくらいには、信頼していた。きっと彼女もそうだったのだろう。

 だから俺は、迷わず返事をした。


「ええよ。諦める日が来たらやけどな」


「うちは諦めへんからな」


「なんやねん。自分から言い出しといて」


「絶対幸せになるさかい。巨乳のお姉様と」


「乳しか見てへんやん……」


「ハルくんは尻派か?」


「……せやな」


「うっわ! なんや今の間! 生々し! やだ〜!」


「うっさい。話振ったのそっちやろボケ!」


 この日彼女と話した内容は、最期の最期まで鮮明に覚えていた。彼女は俺の唯一無二の親友だ。俺がゲイであることで堂々としていられたのは親が受け入れてくれたことよりもきっと、彼女の存在の方が大きかっただろう。

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