道具
道具を使うのは人間だけではない。
ラッコは貝を割るのに石を使い、猿は蟻を食べるのに植物の枝を使う。
ミノムシは植物などを縫い合わせて蓑を作る。
木々を集めたり大木に穴をあけて作る【巣】も、道具の一つだ。
勿論、原初の人間が身に纏う毛皮や洞窟住居も外気温や衝撃から肉体を守る目的の【道具】と言える。
初期段階では自然物をそのまま使うこのような【道具】は、使用者が居なければ【道具】になり得ず、存在意義すら失った路傍の石と成り果てるのだ。
それは、ただ【自然に還る】と言えるので、多くの点で違和感は無い。
だが、後の人間が作る【住居】や【衣服】の様に、特定の目的をもって自然界の物から変容した存在は、そうではない。
使用者が無くなっても、残されたソレは自然界では異質である。
更には【廃屋】【廃品】などと、主を失った被造物は【ゴミ】と言う自然物以下のレッテルすら貼られてしまうのだ。
意思の無い【物】は、客観的に哀れだと思われるだけだが、これらに人間の様な意思があった場合、その存在意義を失う事に多大な恐怖を感じるのは間違いないだろう。
他者からも求められ、自らも意義を感じていた概念が崩れた時に、決して『自由になった』などとは感じない。
虚無感を覚え、自暴自棄となり、自らや世界をも破壊したくなるかも知れない。
ステンレスナイト 二合 富由美(ふあい ふゆみ) @WhoYouMe
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