第100話 秘密兵器のあれ
「……あの高さに飛んでいるドラゴンに攻撃する手段があるじゃと?お主の魔法か何かか?」
「ああ、だがそれにはちょっと特殊な道具が必要になる。あの村の俺たちが寝泊まりしていた家に置いたままだ。それにいくつか問題もある」
「問題じゃと?」
「ああ。まずあのドラゴンが今みたいに空で動かずにいてくれるかだな。その手段は狙いをつけるのに少し時間がかかるから、あのドラゴンに動かれると当てるのはとてもじゃないが無理だ。
次に火力はかなりあると思うが、あのドラゴンにどれだけのダメージを与えられるのかわからない。テスト段階では分厚い金属の板もぶち抜いたけど、あのドラゴンを貫けるかの確信はない。
最後にもしあのドラゴンを一撃で仕留めることが出来きず、中途半端なダメージを与えた場合には藪蛇になる可能性が高い気もする。ドラゴンが暴れ回って余計に被害が増える可能性もある」
「………………ふむ。ひとつ目に関してはドラゴンがどう動くかわからんから何とも言えんの。じゃが狙うのが難しいなら撤退すれば良いだけじゃから問題ない。
ふたつ目に関しても問題ない。ドラゴンは撃ち落とすのが非常に難しいだけで、ドラゴン本体の耐久力はそれほどないはずじゃ。鱗は硬いかもしれぬが金属の板を貫けるのならば問題なく倒せるじゃろ。
……最後の問題は難しいところじゃのう。怒り狂ってこちらを直接攻撃してこようとするならむしろこちらからも攻撃できるから良いのじゃが、ブレスを際限なく吐き散らしたり、妾達を狙うのは諦めて付近の別の村や街を狙うとしたら厄介じゃ」
前の二つに関しては問題ないか。だが最後の問題は俺らだけじゃなく、他の村や街の人達に狙いを変える可能性もあるということか。
「……じゃが付近の村や街はあのドラゴンがここにいるだけで、襲われる可能性は十分高いからどちらにしろ大して変わらん。ユウキ、その策試してみるぞ!」
「了解だ!」
ドラゴンへの攻撃の許可は降りた。あのドラゴンに通用するかはわからないが、やるだけやってみよう!
「それでは皆の者頼むぞ!」
「「「はっ!!」」」
あれから数分、すぐにローラン様が新たに立てた作戦通りにみんなが行動する。といっても基本的には最初に立てた作戦と同じで、まずはニアさん達が草原に出てドラゴンの相手をする。
そしてラウルさんとアガヤさんはローラン様の護衛をしながら森の中で待機をする。
違うのは俺だけだ。ニアさん達が草原に出てドラゴンの注意を集める。そしてニアさん達がドラゴンの相手をしている間にこっそりと村へ走りあれを回収する。そしてドラゴンの隙を見つけてあれを当てる。
「「「うおおおお!」」」
後ろの方から大きな声が上がる。ニアさん達が俺や村の人達にドラゴンの狙いが向かないようにドラゴンを引きつけてくれている。ドラゴンがニアさん達を狙っているのを確認してすぐに、身体能力強化魔法で強化されたスピードで村の方へ走り出す。
最初のドラゴンのブレスで焼けた家が俺たちが寝泊まりしていた家ではなかったのは不幸中の幸いだ。さすがにあのブレスが当たっていればあれは間違いなく使い物にならなかっただろう。
急いで家に入りあれを回収する。よし、特に破損はしておらず問題なく使用できそうだ。急いでローラン様のところへ戻らないと!
「GYAAAAAAA」
とその時、ドラゴンの咆哮が聞こえた。どうした、ニアさん達のほうで何か起きたのか?
急いでローラン様のいた場所に戻る。ドラゴンは今のところ先程と同じ空中に留まっている。
「戻りました。さっきのドラゴンの咆哮は何かあったんですか?」
「戻ったか。先程ドラゴンがまたブレスを吐いてきたのじゃ。今回もエレノアの障壁魔法でなんとかそらすことができた。やつがあと何発ブレスを撃てるのかわからんが、このまま空中でブレスを吐かれ続けたら非常にまずいのう。森の中でうまく逃げられれば良いが、どこまでも追ってくる可能性もゼロではない」
どうやら二発目のブレスをエレノアさん達は防いだようだ。だが確かにローラン様の言う通り、このままではジリ貧だ。もしもドラゴンが時間を置けば無限にブレスを吐くことができ、森の中もひたすら追い続けてくるならいつかは必ずやられる。
というかドラゴンがそんな冷静に獲物を仕留めようとするなよな!ワイバーンみたいな野生の魔物ならば、何も考えずに突っ込んでこいよな。そうすればリスクは上がるかもしれないが、その分こちらにも勝機はあるというのに。
「それでその金属の筒のようなもので本当にあのドラゴンを撃ち落とせるのか?」
「ああ、当てることさえできれば威力は保証するよ」
今回の遠征で使うことはないと思っていた秘密兵器。それは元の世界の知識を使って作った黒色火薬の大砲だった。
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