第97話 ワイバーンの巣
翌朝、朝早く起きて討伐部隊のための昼ごはんをエレノアさんと一緒に作る。今日は俺は同行しないから、調理の必要がないものにしなければならない。
この村でも黒パンは作っていたので、昨日作ったワイバーンカツとワイバーン肉の甘味噌炒めを黒パンに挟んでみた。黒パンは少し小さめのパンだったので、サンドウィッチというよりはホットドッグみたいな感じだな。ワイバーンのカツは試合に勝つみたいな感じでゲン担ぎでいいかもしれない。
「それでは行って参ります」
「ええ、十分に気をつけてくださいね」
日が出てすぐに討伐部隊が出発していく。ローラン様や俺も見送りに出る。ニアさんやラウルさん達6人と、バドーさんを含むこの村の猟師をしているという若い男の人3人の計9名が討伐にあたる。
ルーさんとエレノアさんと俺と残った村の人達はもし万が一ワイバーンがこちらに来た場合に迎撃する。ワイバーン達にどれほどの知性があるのか分からないが、仲間が何体もやられてなおこの村を襲ってくることはないとは思うがな。できればこのままこの村を襲うのを諦めてどこか遠くに行って欲しいが、巣がある以上それもあまり期待できないらしい。
ニアさん達が出かけてからはベッグさんとルーさんと一緒に昨日の続きで壊された屋根を直して、そのまま村の周りの柵を強化する。身体能力強化魔法のおかげで木を切り倒して柵の形に加工するのも簡単だ。
ローラン様とエレノアさんは家の中で子供達と遊んでいる。急にワイバーンが襲ってきたとしても家の中にいればとりあえずしばらくは大丈夫だからな。
ワイバーンが襲ってくることなく日が落ち始めてきた。討伐部隊はまだ帰ってこないが大丈夫なのだろうか?予定ではワイバーンの巣を見つけられなくても日が暮れるまでには村に戻ってくるはずだ。もしや、何か想定外のことが起きたとかじゃないよな?
「……帰ってきたようだな」
「えっ、どこどこ?」
村の周りにある柵の補強をあらかた終えて、ルーさんと一緒に村の入り口で討伐部隊の帰りを待っていたところ、討伐部隊が帰ってきたようだ。しかしルーさんは目がいいな、俺にはまだ全然見えない。
ローラン様や村長さんに討伐部隊が帰還したことを伝えて一緒に戻ると、確かに討伐部隊のみんなは無事に帰ってきていたようだ。
「ただいま戻りました!」
見たところ怪我も汚れもなさそうなところを見ると今日は戦闘にならなかったのかな?
「みな無事によく戻りましたね。それで今日はどうでしたか?」
「はっ、昨日あえて逃したワイバーンの逃げ帰る先を本日調査したところ、やつらの巣を発見することができました」
「よくやってくれましたね!」
「おお、やっぱりこの近くにワイバーンの巣があったのですね!」
ローラン様や村長もワイバーンの巣を発見できたとあって興奮している。まさか昨日の今日でやつらの巣を発見できるとはさすがだ。
「やつらはこの先にある山の頂上付近に巣を作っておりました。巣を発見後しばらくの間観察をしておりましたが、おそらく餌を探して入れ替わりで巣に出入りしており、数は30〜40前後と思われます。日が暮れそうになるまで観察を行い、本日中の討伐は難しいと判断し、本日は一旦帰還してまいりました」
「なるほど、それで明日に討伐は可能そうですか?」
「はっ、問題なく討伐できるかと存じます。あとはできる限りやつらを逃さないようにすることですね。数匹程度であれば散り散りになってどこか遠くに去って行くでしょうが、そこでまた新たな被害を出すかもしれません」
おお、凄いな!40匹いても問題ないのか。確かに最初にこの村に来た時も村の人達を守りながら、怪我もせずに5匹以上のワイバーンを討ち取っていたからそれほどの数でも討伐は可能なのか。
「そうですか、何か不測の事態も起こるかもしれません。明日はくれぐれも注意をしながら討伐にあたるように頼みますよ」
「はっ!」
どうやら決戦は明日になりそうだ。みんなを待っているだけというのももどかしい気持ちがするが、討伐部隊のみんなを信じて待っていることにしよう。
「……ただ、一点だけ気になる点がございます」
「なんですか?」
「ワイバーンの巣についてですが、普通やつらが巣を作る場所は人里離れた深い谷や高く聳え立つ山などがほとんどとなります。ですが今回やつらが巣を作った山はそれほど高い山ではなく、その山の奥には更に高い山がございます。なぜそれほど高くない山の方に巣を作ったのか疑問が残ります」
なるほど、確かに普通の生物が巣を作る時はより外敵が来ない場所に巣を作るものだ。なんでなんだろう?
「……確かに気にはなりますね。ただ単純にこちらに近い山の方が環境が良かったのか、この村を餌場と見てより近い場所にしたかったのか、あるいは……いえ、どちらにしてもワイバーンの群れを倒すことに変更はありませんし、その後にその奥の高い山も調べて見ればわかるでしょう。明日はくれぐれも気をつけるのですよ」
「はっ!」
なんだろう、その奥の山に何かあったりするのだろうか?ワイバーンの群れを倒した後にまだ調査を続ける必要があるのかもしれない。
そのあとは明日の討伐についての作戦などを話し合い、晩ご飯を食べてみんな早めに就寝した。ちなみにワイバーンの肉をたった3日でほとんど食べ尽くしたので今日の晩ご飯は普通の肉を使ったのだが、食べ終わってからローラン様に文句を言われた。
たった3日で舌がだいぶ肥えてしまったようだ。明日は前以上の量のワイバーンの肉が手に入るはずだし、せっかくなら新しい料理法も試してみるとしよう。
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