第95話 ワイバーンの調理法
「よし、こっちの屋根はこれで大丈夫そうだな。次はあっちの屋根だ」
ニアさん達が付近の調査に出かけた後、ローラン様は家の中で村長さんと今後のことや村のことについて話をしている。ルーさんとエレノアさんも護衛なので家の中でローラン様と一緒にいる。もしもワイバーンが来たら、すぐに見張りの人が鐘を鳴らすことになっている。
そして俺はというと、晩ご飯の準備までまだ時間があるので、村の人達と一緒にワイバーンに壊されてしまった家の屋根を補強している。この村の家の屋根は木の板を釘で打ち、その上に金属のトタンのようなものが打ちつけられている。ワイバーンの襲撃により金属部分に穴が開けられ、木の板にまで穴が開きそうなところであった。
「すまないな、客人なのに手伝ってもらってよ。この村には若い男手がそれほどないから助かるよ」
「いえ、もう少し時間があるので気にしないでください」
この村は総勢40人ほどの村人が生活をしている。しかしそのほとんどが老人や女性、子供達で若い男は5人ほどしかいない。というのもこの村だけでは自給自足の生活が難しいらしく、若い男性や女性は街にまで出稼ぎに行っているらしい。
「ああ〜俺らにそんなかしこまった言葉はいらねえよ。俺はベッグだ、よろしくな。普段はバドーと一緒に狩りをしている」
ベッグさんは俺より少し年上くらいだろう。差し出してきた手を握って握手をする。
「わかったよ。俺はユウキだ、よろしく」
「しかし本当に助かったぜ。俺らじゃあんなにたくさんのワイバーンに歯が立たなくてよ。ゴブリン程度ならどうとでもなるんだが、あれだけの数は反則だよな」
屋根を直しながらベッグさんと話をする。穴の開けられた場所に木の板とトタンを釘で打ち付けていく。
「確かにあれだけの数がいると上級冒険者とかじゃないと難しそうだな」
「ああ。一体程度ならみんなで囲めばなんとかなりそうなんだが、あれだけの数がいたらもう無理だ。
それにしてもさっきのあんたの仲間達は凄かったよ!あれだけの数のワイバーン相手に怯みもせずに立ち向かっていたぜ。空から襲ってくるあいつらを撃ち落としたり、槍や魔法で翼を斬ったりしてたな。俺は魔法を見たのは初めてだったけど格好良かったぜ」
やっぱり魔法を使える人はこの村にはいないらしい。街でも魔法を使える人は珍しいくらいだからな。
「そうなんだ、俺も見てみたかったな」
前の馬車が邪魔をして戦闘シーンは見れなかった。ニアさん達の戦闘は非常に勉強になるから本当は見ていたかったんだが仕方がない。
「よし、これで屋根の補強は終わりだ。助かった、思ったよりもだいぶ早く終わったよ」
「大したことはしてないよ。そういえば、さっき倒したワイバーンはどこにいったんだ?できればワイバーンの肉を晩ご飯用に少しもらいたいんだけど」
「ああ、それならあっちの方で女達が解体していたな。なんでも皮や牙は高価な素材になるらしいから、解体してすべてあんた達に渡すって村長が言ってたぞ」
ローラン様に聞いたが、確かにワイバーンは高級素材になるらしい。なにせ空を飛んでいるからな。発見することは容易でも撃ち落とすのはなかなかに難しい。
そしてその肉はあのライガー鳥以上の高級品で、滅多に市場に上がらないそうだ。小さくてもドラゴンに分類されるそのワイバーンの肉は極上の脂がのった霜降り肉らしい。ついに俺もこの異世界でドラゴンステーキ童貞を捨てる時がやってきたらしい。
「これがワイバーンの肉か!」
今俺の目の前には夢にまで見たドラゴンの肉がある。綺麗に解体された枝肉、牛肉よりもさらに深い赤みがかかった鮮やかな色に薄らと白い脂身のサシが入っている。
さて、どのように調理しようか?かなりの量があるし、とりあえずドラゴンもといワイバーンステーキは確定としてもう2〜3品は作りたい。
ローラン様には許可をもらってこの村の人達の分も作るからかなりの量になる。とはいえ実際の作業はエレノアさんや村の女性達が手伝ってくれるからだいぶ楽になりそうだ。焼くのは調査部隊が帰ってきてからになるから、今のうちに下処理とかをやれるだけやっておこう。
「ただいま戻りました」
日が赤く染まり地平線の向こうへ落ちかけたころ、ニアさん達調査部隊が村に帰ってきた。遠目から見たところ全員大きな怪我もなく無事のようだ。そして一体のワイバーンを担いでいる。
「よかった、みんな無事に戻ったようですね。してワイバーンの巣は見つかりましたか?」
「申し訳ございません、未だ巣の発見までは至っておりません。しかしおおよそですが、ワイバーン達が戻っていく方角は掴めました。道中またもや3体のワイバーンがこちらを襲ってきましたが、返り討ちにしてあえて2匹逃がすことで奴らの巣の位置を確認しました。明日の朝より捜索を続行したいと思います」
なるほど、あえて逃すことでワイバーン達が戻る方向を特定したということか。ワイバーンはゴブリン達よりも賢いが、人並みに知能がある訳ではないから罠ということもないだろう。
「よくやりましたね!くれぐれも明日も慎重にお願いしますわ。細かい話はまた後で聞きましょうね。さあ、みんな疲れたでしょう、すぐに晩ご飯にしましょう。ユウキ、準備をお願いね」
「はい!」
本当にみんな無事に戻ってきてなによりだ。さあ、下ごしらえをしていた料理の仕上げをやってしまおう。
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