4-1 女神とバトル

 女神教の総本山である、聖都何とかってところも陥落させた。



 ここは宗教都市国家で、住まう人間は聖職者が多く、神聖魔法の使い手が多かった。

 おかげで、30万に膨れ上がったゴミクズアンデッド軍団を、綺麗に片づけてくれた。


 ターンアンデッドの連発で、平原にゴミのように溢れていたアンデッドが浄化されていく様を見て、彼らの熱心な清掃活動に感謝の念しか抱けない。


 いやー、ありがた過ぎて、足を向けて寝られないな。


 まあ、この都市の生き残りはもはや百数人といった状況で、これ以上都市国家と名乗ることはできそうにない。

 滅びたも同然なので、廃墟に向かってなら、足を向けて寝ても全然問題ないな。

 ハッハッハッ。



「よーし、これで11カ国目も征服だ」


 アンデッド軍団で聖都を攻め滅ぼす必要はなかった。

 アンデッドたちがきれいさっぱり片付けば、それでよかったのだが、結果的に11カ国目も征服完了だ。


「兄さん、征服でなく滅亡の間違いでしょう」


「ヴッ」


 イクス、真実を言うな。


 俺がしたいのは世界征服なのに、これまでに遭遇した11カ国は、住民が全滅して廃墟都市になってしまった。

 大規模に戦った聖都以外は、住民を即アンデッドにしていたので、建物自体は傷ひとつなく残っているが、人がいなけりゃただの廃墟だ。


 そして都市国家相手なので、都市の滅亡イコール国家の滅亡となる。



「いかんな、このままだとマジで世界を滅ぼしかねない。

 俺たちの場合、征服するより壊す方が簡単だしな」


 俺が本気を出せば、惑星丸ごと炎の海にかえることだってできる。

 実際にやったことはないから、多分だ。

 でも、そんなことして一体何になるって言うんだ?


 俺は全ての生物を根絶やしにした挙句、1人残されて宇宙空間でボッチになんてなりたくない。



 そういえば、どこかの引きこもりの大御神は、有人火星探査船に1人(1柱)乗り込んで、シクシク泣きながら引き籠ってるらしい。


 なんでも、

「地球が征服されたのは私のせいじゃない。私は悪くないんだ」

 なんて、うわ言を繰り返している。



 あんなのが、地球のとある民族の主神だっていうんだからヤバいな。

 あんなの信奉してる民族は、大丈夫か?


 ダメだな。


 主神があれなので、あそこの民族は引きこもってる奴が多い。



 しかし、そんなことをいつまでも考えて、現実逃避していても仕方ない。


「大丈夫だ。

 次からは攻め方を変えるから、ちゃんと征服するぞ。もう、全滅はなしだ」


「そうなるといいね」


 全然心のこもってない声のイクス。

 こいつ、俺のことを信用してないな。


 お前は、俺のことをなんだと思ってるんだ!?



 聞いてみたいけど、『親父の息子』だと答えられそうだ。


 俺は親父ほどぶっ飛んじゃいないのに、あんな頭のイカレタ変態と同レベルなんて言われたくない。




 ま、それはそれとしてだ。


 ここから先は、遊びではなく戦争を始めるとしよう。


 俺はそれまで弛緩していた顔を引き締める。


 俺の雰囲気が変わったのを察して、イクスも呆れっぱなしでいた顔を、真剣なものにかえる。



「兄さん、やるつもりなの?」


「当然だ。女神教と名乗っている連中の神相手に、戦うぞ」


 俺がこの聖都を攻めたのも、ゴミ掃除だけが目的じゃない。


 ここには女神教の聖地があり、そこから女神のいる天界へつながる道がある。


 それは人間には見ることも触れることもできないが、俺やイクスには分かる。


 何せ俺たちは半神なので、神としての属性を有している。

 親父は元人間だが、やりたいことをやって好き勝手に生きまくった結果、最終的に種族が神にまで到達してしまったからな。


 そんな訳で、親父から生まれた俺たち兄弟は、種族が半神だ。


「では、ここからは戦争を始めよう」



 俺はストレージから神殺しの神剣を取り出して、鞘から引き抜く。


「僕も兄さんについてく」


「……そうか、お前の好きにしろ」


 本当は、1人で神の世界に殴り込みをかけるつもりだったが、イクスもついてくると言うなら止めはしない。


 こいつは俺や親父より弱い。

 けど、それは比較対象が悪いだけで、実力自体はその辺の魔王程度とは比べ物にならない。



「お前たちは足手まといだから、ここで待機していろ」


 神の世界に殴り込みをかけるとあって、12魔将もついて来ようとした。

 しかし神の世界での戦いとなれば、魔王クラスのアンデッドたちでは役不足だ。


 神に仕える天使相手に、10体20体程度なら戦えるだろう。

 だが、その程度の強さでは、神の攻撃の前では肉壁にもならない。


 さすがにお気に入りの玩具を庇いながら、神と戦うなんて芸当は俺にも無理だ。


 骸骨の表情を変えることができないのに、12魔将たちは明らかに不服そうにする。


 だが、俺がひと睨みすれば、それだけで玩具たちは不満を霧散させた。



「じゃ、行くぞ」


 俺は神殺しの神剣をひと振りして、ここから先に続く女神の領域へ、道を繋いだ。


 俺とイクスだけが、その道を進む。

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