プロローグ4 異世界転生した親父は、やりたいことして生きる

「こんな中世ヨーロッパ風のナーロッパなんて嫌だ。俺は地球の文明が懐かしい!」


 魔界、人界、天界の3界を征服して、世界の主となった親父だが、不満なことがある。


 この世界、実はトイレは水洗でなくボットン。

 街の通りを歩けば、そこら中に馬車を引く馬やドラゴンのクソが転がっている。

 それにインターネットもなければ、テレビすらありゃしない。

 テレビどころか、ラジオだって影も形もなしだ。


「こんな遅れた世界はイヤだ。地球の文明がいい!」


 そんな叫びから、親父は次元の壁を飛び超えて、地球へ帰還した。

 何しろ神殺しまで達成して、新たな世界の(魔)神となった親父。


 次元の壁を飛び超えるのもお茶の子さいさい、とまでは言わないが、出来てしまうわけだ。




 ただし、地球に帰還したのは親父1人でなく、おまけの軍勢付き。


 ほんの30億程度の、魔界、人界、天界の3界の軍勢だ。


「野郎ども、地球を征服して、俺たちの世界に地球の文明を持ち帰るぞ。

 犯せ、殺せ、奪い尽くせー!」


 現代科学兵器を持っている相手に、中世風ファンタジー世界の軍勢を大動員して、戦いを仕掛ける有様。


 親父はあまりにも魔界の生活に適応しまくった結果、現地の魔族以上に、脳みそがヒャッハーしまくっている。



 10億を超えるゴブリンの大軍団に、ソ連式突撃戦法を敢行させ、銃弾と砲弾の雨に一方的な被害を被りながらも、ゴブリンたちはヨーロッパ諸国を制圧した。


 数こそパワーだ!

 中国人の数には負けるが、インド人には勝てるパワーだ。

 旧ソ連では畑から兵士が取れたそうだが、ゴブリンはその辺の道を歩いていればいくらでも転がっているので、簡単に集めることができる。

 中国人とインド人だって、似たようなものかもしれない。


 ただ、この事態を重く見た超大国が、核兵器を使ってゴブリン軍団を消し飛ばした。


「ゴブリンは滅びぬ、何度だって蘇る!」


 ゴブリン軍団を率いたゴブリンキングは、そんな事を最後に叫んだとか、叫んでいないとか。



 また、征服戦争では米中露の連帯皆無の、超ギスギス関係の三か国連合軍とも戦った。


 超大国の繰り出す航空戦力に対して、力自慢の魔族たちは、竹やりを飛ばして迎撃した。

 中には超高々度爆撃機を、地上からの投擲で破壊できる猛者魔族までいた。


 かつて旧日本軍が理想とした戦法を、魔族軍は実現してのけた。



 また、高位魔族の中には核撃魔法と呼ばれる、核兵器と同等の破壊魔法を使える連中がいたので、核による全面戦争は当初回避された。


 でも、せっかく作ったものはいつか使わないと言うことで、戦争末期に敗色濃厚になった超大国が、ヤケクソになって核兵器をポンポン撃ちまくった。


 そのせいで大都市は焼け落ち、地球の多くの人口が死に絶えた。

 親父が征服する前に、地球最後の日が到来してしまった。


 もっとも、核兵器の真の恐ろしさは、威力でなく、その後に残る放射線。

 だが、浄化魔法という名の異世界魔法で放射線を中和できたので、地球最後の日はなんとか回避された。


 そんなこんなで超大国も征服して、見事地球征服を達成した。



「ヒエエエーン、どうして私が転生させた男が、戻ってきてるのよー」


 あと、征服の途上、とある引き篭もりの大御神が、大泣きに泣きまくって捕まった。



「ゼウス、逃げるぞ」


「トール、逃げるって言っても、今からだと宇宙に向かって逃げるしか……」


 それと某異教の神々も、地球から大慌ててトンズラしようとした。



「貴様ら、前世の俺の死因のくせに、逃げようとするんじゃねえー!」


 しかし残念。

 既に(魔)神化している親父に捕まってしまい、2柱の神は簀巻きにされた挙句、クトゥルフのいる大海原の底に沈められてしまった。


 その後伝え聞いたところでは、2柱の神が、ヌメヌメの触手責めにされていることが分かっている。

 が、この話を深く知ってもいいことはないので、俺はこの件について、これ以上何も知るつもりはない。




 そんなこんなで、地球征服を果たした親父。


 無事に地球の文明、技術を手に入れて、3界の支配者から、新たに地球を含めた4界の支配者になった親父。

 以後300年に渡って、4つの世界を支配することになる。


 こんな歴史があるので、当然ながら俺は、地球の文物についての知識を持ち合わせている。

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