彼女が10歳の頃、工業革命がおこって社会は大きく変わろうとしていた。それは彼女の住む農村においても例外ではなかった。巨大なトラクターに自動皮むき器などが導入されて、豊かな暮らしが始まる。

 そんなある日、彼女は近くの丘に写生に行った。ここにはたくさんの花が咲いていて、その中でも野生のマリーゴールドが独特のオレンジ色をしていて奇麗だった。それらの花々は、この丘に吹くそよ風に乗せられて鼻を刺激する。そんなこの丘を彼女は気に入っていた。

 写生を初めて、何時間か経ったが、彼女には数分にも思えなかった。

 刹那、彼女の衣服が疾風に煽られて、旗のように揺れた。飛ばされた麦わら帽子を目で追って、頭上を見た。セルリアンブルーの真ん中に真っ白な鉄の鳥がいた。 

 「飛行機。」

 彼女はそう呟いた。

 そして彼女は美しいそれに恋をした。

 それが、リディと空との出会いだった。

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