最終話 わたしの告白
わたしは
<こんにちは! ねえ、今日これから会ってくれない?>
返事はすぐに来た。
<うん。いいけど、どこで会う?>
<話したいことがあって、二人きりでいたいからカラオケボックスに行こう?>
<うん。わかった>
<今から現地集合でいい?>
<わかった>
<じゃあ、のちほど>
連絡を取り合ってわたしこと高坂美津は外出の準備を始めた。自分ではこれ以上ないお洒落をした。素足を出して水色のワンピースを着て、レモンスカッシュのコロンを少し振りかけた。さわやかな香りがした。よし! 行こう。学校が終わってからの外出。一応、お母さんには、「出掛けてくる」と言って家をあとにした。すると突然の雨。タイミングが悪い。一旦、家に戻って傘を取りに行った。雨だなんて先行きが不安。嫌な予感がする。わたしは、傘をさしながら自転車を乗るのは怖いので歩いて行くことにした。わたしは、和也にLINEを送った。
<雨降ってきて傘さして自転車乗るのは怖いから歩いて行くね。三十分くらいかかると思う>
でも、LINEはすぐには返ってこなかった。気付いていないのかな。そんなことを考えながら歩いていた。
カラオケボックスに着いたころLINEがきた。見てみると和也からだった。
<今、歩いてる? LINEに気付かず自転車で来たから早く着いた>
わたしは笑みを浮かべながら店の中に入った。和也は玄関の近くにいる椅子に腰かけてこちらを見ていた。
「こんにちは!」
わたしは挨拶をした。和也は笑顔でこちらに向かって来た。
「美津! 歩いて来たのか。疲れただろ? 大丈夫か?」
わたしも笑顔で、
「大丈夫だよ、ありがとう!」
彼は、
「カウンターに行こう」
と言いわたしは、
「うん」
返事をした。
受付を済ませ、わたしたちは奥の十号室に案内された。二人きりにしては広い部屋。彼と二人きり。この前もカラオケボックスで二人きりだったけれど、今日はいつもとは違って緊張している。少なからず、わたしの側は。
「和也から歌っていいよ」
「おっ! 珍しいな。いつもなら美津が先なのに」
確かにそう、いつもならわたしが先に歌う。
「そういう気分なの」
「そうなんだ」
緊張をほぐしたくて、二曲目はわたしが歌った。熱唱した。
「いつもより声が出てるね! 凄い」
「あんまり突っ込まないで」
「えっ! 褒めたんだけど」
「あっ、そうだよね、ごめん」
「いや、いいけど。なんか、今日の美津はいつもと様子が少し違うね」
「そう?」
図星。どうしよう。こうなったら、
「和也」
「うん?」
「わたしのことどう思う?」
彼は、一瞬、固まった。
「どうって、仲良くしてくれる女子友達と思っているよ」
「女子友達か……」
和也の顔をみると不思議そう。
「え? なんかマズイこと僕言ったかな?」
わたしは首を大きく左右に振った。
「もう我慢できない言うね! わたし、和也のことが好きなの! だから、だからわたしと付き合って!」
わたしはフラれるのかと思い、彼と目を合わすことができなかった。チラリと盗み見ると、柔和な表情になっていた。
「美津がそういう気持ちでいるのは何となく察していたよ」
「そうなの?」
「うん。もちろん、OKさ。よろしくね」
「ほんと? よかったぁ。フラれるかと思っていたからさ。こちらこそよろしく」
わたしは心の底から安堵した。よかった。本当によかった。和也は優しい眼差しでわたしを見ていた。これからは彼氏と彼女の関係。たくさん甘えてやる! わたしはそのようなことを心の中で密かに呟いた。
(終)
学生生活 遠藤良二 @endoryoji
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