29話:殲滅完了?

 俺とアウラは、迫る魔物の大群を蹂躙していた。

 聖剣で斬られた魔物は塵と化し、アウラの魔法で焼かれた魔物は灰となって次々と焼かれていた。


「多いな。魔王軍と戦って以来じゃないのか?」

「魔王軍には魔物を操る者が多かったからね~」


 のんびりとした会話をしながらも、俺とアウラは魔物を殲滅していく。

 背後では、カエデたちが俺とアウラの戦いを見ていた。

 その表情は、信じられないとでも言いたげだ。


「う~ん。一気に倒したいけど、家に被害が出るかもしれないな」

「今更気にする? 周辺は焼けているわよ?」

「それでも気が引けるんだよ」

「ふーん」


 だがアウラも同じことを思っているのだろう。

 だんだんと魔法の威力が上がっていく。


「アウラ。ほどほどに抑えておけよ?」

「わかっているわよ」


 それから数十分して、結局面倒くさくなったアウラの魔法によって、魔物たちは灰となって消え去った。


「やるなら言え! 危うく俺まで巻き添えを食らうところだったぞ!」

「でも大丈夫じゃん」

「それはそうだが……」


 兎にも角にも。大群を殲滅できたので良しとしよう。

 振り返ると、カエデたちは呆然と突っ立っていた。


「カエデ?」


 声をかけても反応がない。

 心ここにあらずといった感じだ。


「カエデ、終わったぞ」

「……え? あっ、はい! ありがとうございます!」


 頭を下げるカエデを見て、我に返った妖たちも頭を下げる。


「その、凄かったですね……」

「あの程度、敵じゃないわよ」


 答えたのはアウラだった。


「あんな低級。雑魚よ」


 アウラの言葉に、カエデは小声で「でも鬼とか色々強そうなのが……」と言っていたを、俺は聞き逃さなかった。

 確かに、カエデたちからしたら脅威だったかもしれない。


「勇夜さん、もう魔物は?」

「いないな。気配も感じないし、アレで終わりだと思うよ」

「わかりました。では姉様のところに案内しますので、着いてきていただければ」


 カエデの言葉に頷き、俺とアウラはその後をついて行く。

 歩くと、怪我をした妖が多かった。

 それらを見ながら、カエデに尋ねる。


「被害は?」

「死傷者多数です……対応がもっと早ければ、こんなことには……」


 俯くカエデ。

 一緒にいた妖も、被害が大きいことからも表情が暗い。

 戦いで被害が出るのは仕方がないことだ。それでも、一般人を巻き込むのは間違っている。


 しばらく歩いた俺たちは、長い階段を上り、社へと到着した。

 武器を持った兵が俺とアウラを見るなり警戒をするが、カエデが軽く説明をし、一緒にいた妖に監視させることで、中に通された。


「助けていただいたのにすみません」


 申し訳なさそうな表情で謝るカエデに、俺とアウラは気にしてないことを告げる。

 社内を歩き、以前サクラと会った場所の部屋へと向かった。

 扉の前に立ち、カエデが俺とアウラに説明する。


「中には里の長老たちもいます。何か言われるかもしれませんが……」

「俺とアウラは妖じゃないから仕方がない。それくらいは理解しているつもりだ」

「ありがとうございます。では」


 カエデによって扉が開かれた。

 開かれたと同時、俺とアウラに視線が集まる。

 その奥には、少し驚いた表情をしているサクラの姿があった。


「姉様、ただいま戻りました」

「カエデ、お疲れ様です。お二方もこちらに」


 言われるがまま、俺とアウラは囲まれるような形で、カエデの隣の座布団に腰を下ろした。


「カエデ様、この者は? 見るからに人間ではないですか」


 一人の長老だろう声をかわきりに、他の長老までもが避難の声をカエデに浴びせる。

 反論もせず、俯くカエデ。そこにサクラが手を挙げて静まらせた。

 さすが巫女といったところだろうか。権力的には巫女が上なのだろう。


 そんなことを考えていると、サクラが口を開いた。


「その者は私の知り合いです」

「人間の知り合いですと? 初耳ですな。説明していただけるのですか?」

「説明はします。ですが、その前に例の魔物の大群についてです。カエデ、話していただけますか?」

「はい」


 カエデは、自分がこの社を出て行った後について話した。

 サクラも長老も、カエデの話を黙って聞いている。


「そしてこの二人が、勇夜さんとアウラさんが、魔物の大群を殲滅しました」


 大群の殲滅という言葉に、ザワッと動揺が広がるのだった。

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