26話:のんびりとしよう
早朝。
俺が妖の里から帰ってくると、ちょうどアウラが起きていた。
「アウラ、今戻った」
俺の顔を見て、何かあったことを察するアウラ。
「おかえりなさい」
「ただいま」
「何があったのよ?」
アウラの質問に、俺はすべてを話す。
俺が話している最中、静かに聞いていたアウラは、まっすぐにこちらに視線を向けた。
「それで、また今晩にでも、その妖の里に行くの?」
「恩は返さないとな。命の恩人だ」
「そう。私も行きたいところだけど、どうせここにいろって言うんでしょ?」
「いや、家には俺が結界を張っておくよ」
「ふ~ん。ついてきてほしんだ?」
ニマニマした顔で俺をのぞき込むアウラのあざとい表情に、思わず「可愛いじゃねぇかよ!」と叫びそうだったのを抑え込む。
「あれれ~? もしかして照れちゃってるの? 勇者なのに~?」
ニヤニヤしているアウラを見て、思わず顔が赤くなるも、コホンと咳ばらいをして誤魔化す。
「そんなわけないだろ。アウラの力が必要だ。恐らく俺一人じゃ足りないからな。頼めるか?」
「何言ってるのよ。私が断るとでも思っているの?」
困ったように微笑むアウラに、俺は「ありがとう」と告げた。
「それで、今日は何をするのかしら?」
「今日はのんびりしようかな」
「ふふっ、わかったわ。なら私と陽菜で何かしているわ」
「頼むよ」
程なくして祖父母が起きてきた。
「おはよう。勇夜にアウラちゃん。にしても勇夜は今日も早いんじゃな」
「二人ともおはよう。そうね。もう少しゆっくり寝ていればいいのに」
「おはよう。じいちゃん、ばあちゃん。少し散歩してきていたんだ」
「あら。まだ薄暗いのに?」
窓の外を見ながらそういう祖母。
確かにまだ薄暗いが、都心部とは違い、朝の空気は澄んでいて気持ちがいいのだ。
「朝の空気は澄んでいて気持ちがいいからね」
「そうね。向こうと比べるとそうなのかも。それでアウラちゃんは、今日は早いわね。陽菜はまだ寝ているの?」
「私が起きたらちょうど勇夜が散歩から帰ってきたところだったのよ。あと陽菜はまだ寝ていたわ。だらしないったらありゃしないわ」
アウラの言葉に、祖父が「まだ子供だからのぅ。寝る子は育つと言うしのぅ」と笑っていた。
「お茶を淹れるわ。二人も飲むでしょう?」
「うん。ありがとう」
「飲むわ。そうだわ、あたしも手伝うわ」
「助かるわ」
アウラは祖母と一緒にお茶を淹れに向かった。
俺は祖父と談笑する。少ししてお茶を淹れて戻ってきたアウラと祖母を入れて談笑を始めた。
7時になったので朝食の準備に向かった祖母とアウラ。
台所で和気藹々と話しながら朝食の準備をしているのを見ていると、陽菜が眠そうな瞼を擦りながら居間へとやってきた。
「おはよう……」
「遅いな」
「遅いって……お兄ちゃん、まだ朝の7時だよ? みんなが早起きすぎるんだよ……って、アウラちゃんは?」
アウラの居場所を聞かれたので、俺は台所を指差した。
「おばあちゃんを手伝ってるのか」
「そう。いいから早く顔を洗ってこい」
「うん」
陽菜は欠伸をしつつ、洗面所へと向かった。
俺と祖父は顔を見合わせると可笑しそうに笑った。
「じゃあ、俺も二人を手伝ってくるよ」
そう言って俺は台所へと向かった。
それからみんなで談笑しながら朝食を食べ始めたのだった。
午前中は縁側でのんびりお茶を飲みながら外を眺めていた。
そこに祖父がやってきて、俺の隣に腰を下ろした。
「勇夜、外なんて眺めてどうした?」
「何にも変わってないなって」
「……そうじゃのぅ。ここは勇夜の母さんが生まれる前から、何も変わってない。しいて言えば、建物とかが新しくなったくらいかのぅ」
「みたいだね。心が安らぐよ」
俺と祖父は静かに外を眺めながら、時間を潰すのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。