四季刻歌

「ここで君と初めて会ったのも六十年前か……」

 

 六十年後の春……六十年前私とハルが初めて会ったあの海辺にやってきていた。

 あの時と同じ、ヒラヒラと桜の花びらが風に飛ばされて桜吹雪を作っている。

 

「六十年前って言っても私は全然変わってないけどね」

 

 今の年齢は私は百六十歳。

 ハルは七十一歳になる。

 

 さっきも言った通り。

 私は今でも不老不死は治っていない。

 それとは別にハルは手はシワシワになり。

 少しずつだけど死に向かって行ってしまっている。

 

「はは……それはそうだけどね」

 

「……この桜の木って六十年前も咲いていたよね.」

 

 私は桜の木の幹に手を当てハルにそう質問した。

 

「そうだね……でももう少しで死んでしまうかもね」

 

 桜の木の寿命は六十年から七十年ぐらいとされている。

 つまりもう少しで桜の木も死んでしまうのだ。

 

「なんだ……桜の木も私と同じ不老不死かと思った……」

 

 私は少し残念な気がした。

 同じ存在がいれば永遠にこの桜の木と話せる気がしたからだ。

 

「……そんなに悲しそうな表情するなよ。来年桜の木を埋めよう」

 

 ハルは悲しそうな表情をしている私を慰めるような口調だ。

 

「……そうだね」

 

 この時、私は理解してしまった。

 私と永遠を過ごせる人間は居ない。

 こうやって、ハルのような優しい人と永遠には話せないことを……。

 そんなこと、とっくに理解したつもりだったのに……。

 

 そんなことを思うと、次第に涙が私の目を覆った。

 

「……っ……っ」

 

「お、おい。どうしたんだよ……シキ」

 

 ハルが心配そうに私に寄り添ってくれる。

 

「だって……来年もこうやってハルとたわいもない話もできる保証はどこにもないって思っちゃって……ごめんね。こんなこと思っちゃって」

 

 本当に申し訳ない。

 これを思ってしまうということは、ハルがいつか死んでしまうと思っているということだ。

 

「……別にいいさ。人間誰だってその時は来るんだ。覚悟はしているよ。でも、僕はこの人生に後悔はしていない。

 シキに出会えて、六十年間も一緒に友達としてそして夫婦として過ごしたことに後悔はないよ……」

 

 私の泣いているところにハンカチを差し出しながらハルは言った。

 私も後悔はしていない。

 あの時、ハルに止めてもらったから今の私がいる。

 百年以上生きてきて初めて本当の愛というものに触れられた。

 すごく……すごく今が幸せだ。

 

「ありがとう……本当にありがとう。ハル」

 

「こちらこそ。君と出会えたから、この幸せがある。ありがとうシキ」

 

 私たちは数年ぶりのキスをした。

 さすがに私は十歳前後ぐらいの身長しかないから身長差はあるけど、なんというかその……すごく暖かかった。

 

 少しだけの気恥しさとお互い顔を赤らめて目を合わせた。

 

「……家に帰ろっか」

 

「そうだね」

 

 桜吹雪の舞う中私たちは家に帰って行った。

 

 

 

 一年後……ハルは静かに息を引き取った。

 

 最後は言葉も出なかったのか笑顔で私の手を握ってくれた。

 私は心の中で

 

 ——ありがとう。ハルが居てくれたから、こんなに幸せだった——

 

 と、伝えハルを見送った。

 

 

 私はまた、あの海辺に向かい、海の中へ歩いていった………

 

 

 

 

 

 

 

 こんにちは三上蒼太です

 なんか重い内容になってしまいすみません。

 なかなか書くのも難しいので手探りで書きました。

 あと、自分は本を読まないくせに書いているので、文体がめちゃくちゃの時があります。

 そこはご愛敬ということで笑。

 

 こういう短編を書くのは久しぶりなのでご感想など聞かせてくれると嬉しいです!

 よろしくお願いします!

あ、ちなみにこの小説の元は綿飴様の四季刻歌という歌です!

少し調べて見たのですが僕の想像と少し内容が違ったらしいです。

僕の解釈が間違っていたというのか....

ブックマークなど感想がもらえると嬉しいです!

 

 

 ではまた後ほど…………。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

不老不死な私と1人の少年 三上 蒼太 @koushien

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ