インヘリテンス２

第52話【作戦】

　――バルザ VS ロコ&ジレット

「ジレット油断するなよ、 奴は……」

　するとジレットは飛び出した。

「ぬをおおおお！！」

　ジレットがバルザへと右拳を突き出すと、バルザは左手でジレットの拳を掴んだ。

「なにっ！？」

「フッ！」

　するとバルザはジレットの腹部に右拳をねじ込み、両手を組むとジレットの頭へと叩きつけた。

「ぐわ！！」

　それを見たロコが呟いた。

「あんの馬鹿……！！」

　そしてロコもバルザへと突っ込むと剣を鞘から振り払った。

　バルザはその剣をも素手で掴み、ロコの側面へと蹴りを放った。

「ぐを！！」

　ロコが吹き飛ばされるとすぐさまジレットが立ち上がり、拳を連発で放った。

「がはははは！！」

　バルザはジレットの拳の連弾を全てガードし、隙を見て拳を下から放ち、ジレットの顎をはねあげた。

「はぐっ！！」

　そして顔面に拳を放ち吹き飛ばした。

「ぐああ！！」

　ジレットは大木へとぶつかり、バルザは二人に呟いた。

「おい、そんなもんじゃないのだろう？　さっさと本気をだせ、さもないと本気を出さずに死ぬことになるぞ？」

　するとロコがジレットへと声を掛けた。

「おい……こいつはアーク無しで勝てる相手じゃねえ、最初から全力で行くんだ！」

　ジレットは立ち上がると拳と叩き合わせた。

「がははは！　そうみたいだな！！　ぬあああ！！」

　するとジレットの身体からアーク光が放たれ、またロコもアークを放出させた。

「フッ！　くをおおおお！！」

　そしてバルザもまた、オームを放出させた。

　ロコとジレットは同時にバルザへと飛びかかった。

　ジレットがアークを込めた右拳を放つとバルザは同じく右拳で迎え撃った。両者の拳がぶつかり合うとアークとオームがはじけ飛び、周りの大木を消滅させた。

「はっ！」

　そしてロコがバルザの後ろから剣を横なぎに放つとバルザはそれを首を下げ躱した。首を下げたバルザの胴体を両腕で掴んだジレットは後ろに反り返りながらバルザを地面に叩きつけた。

　すると地面に叩きつけられたバルザの上部にロコが飛び込み剣を振り落とした。

「フンッ！！」

　バルザが右腕で剣を受け止めると、血が飛び散るも剣は止まった。そしてロコを剣ごと右腕で振り飛ばした

「ぐはあ！！」

　立ち上がっていたジレットはバルザへと身体ごと肘を落としたが、バルザは横に転がり避けると立ち上がり、腕から流れた血を舐めた。

「フッフッフッ……なかなか、良い動きになったじゃないか……」

　吹き飛ばされたロコは再び構えを取ると右足を気にしていた。

「ちっ！」

　ジレットはロコの動きの異変に気付くとロコに声を掛けた。

「おいロコ！　お前、足を痛めたな？」

「あん？　だからなんだよ？　まさか自分一人でやるなんて言い出すんじゃねえだろうな？」

　ジレットは両拳をぶつけ合わせ前へと出た。

「がははは！！　その通りだ！！」

　ロコは額に手を当て呟いた。

「あのなあ……お前一人で勝てる相手じゃねえよ……二人でやって確実に勝つんだ！」

「がははは！！　そんなものはやってみなければわからんだろう！？　それに、二対一ってのはどうも性に合わん！！」

　するとジレットは全身を漲らせた。

「はああああ…………がああああ！！！！」

　ジレットから先ほどよりも多くのアークが放出され、周りの木々が大きく揺れ動いた。

「ジレット……お、お前……」

「ホウ……」

　ジレットは再びバルザへと飛び出し、拳を連弾した。

「ぬをおおお！！」

　バルザが迎え撃つと二人の激しい打撃戦が始まった。両者は互角の打撃戦を繰り広げ、共に防御もせずに攻撃を当て続けた。

「グヲオオオ！！」

「があああ！！」

　しかし、徐々にバルザの攻撃がジレットを上回り、ジレットの被弾が増えてきた。

「ぐはっ！　ぐおっ！」

　するとジレットは膝を突いた。

「フッフッフッ……よく頑張ったがこれまでか？」

「が、がははは……そうでもないさ……」

　するとジレットの地面に着けた両手からアーク光が輝いた。

「デライド！！」

「何？！　グヲオオオオ！！」

　次の瞬間、バルザの足元が崩れバルザは大きな穴の中に瓦礫ごと埋まってしまった。

「はあはあはあ……が、がはは……足元注意だな……」

「ジレット！！」

　ロコがジレットの元へと駆け寄った。

「大丈夫か？」

「がははは！　どうって事ないさ！　お前こそ、そんな足でこの先戦えるか？」

「折れたわけでもない、心配するな」

「がははは！　やせ我慢しやがって！」

「けっ！」

　その時、瓦礫に埋まった穴の中からオームが輝いた。

「なに？！」

　そして瓦礫が吹き飛ばされると、その中からバルザが現れた。

「フッフッフッ……意外だったな、肉弾戦のみタイプかと思っていたが、まさか魔法も使えるとはな……」

　バルザは顔に着いた泥を拭った。

「ならこちらもそれ相応の戦い方に切り替えるか……」

　バルザは両手を広げると、オームを集中させた。

　すると両手に拳大程の球体のオームが現れた。

「ガルヴァ！！」

　バルザは無数の球体オームを二人へと飛ばした。

「ぬをおお！！」

　ジレットは飛んできたオームを殴り飛ばした。しかしロコは横へ飛び避けるが、着地した瞬間に足に痛みを感じ、動きが止まってしまった。

「ぐうっ！！」

　しかしオームはさらに迫って来ていた。

「くそっ！！」

　その時、ジレットが突っ込み、ロコへと迫るオームを殴り飛ばした。

「フッフッフッ……」

　すると二人の背後にバルザが現れ、二人の後頭部を掴むと地面に叩きつけた。

「うがあ！！」

　そして二人を掴むバルザの両手から、オームが輝いた。

「うをおおおお！！　デライド！！」

　ジレットは片手を地面につけると地面に大穴を開けた。

「フッ！」

　バルザはその場から後方に飛び離れた。

「おりゃあ！！」

　ジレットが瓦礫を吹き飛ばし、二人は姿を現すとロコがジレットに呟いた。

「こりゃあ……しんどい戦いになってきたな……」

「ぬうーん……よし！」

　ジレットは拳をぶつけ合わせた。

「俺がなんとか隙を作る！　お前はその隙をついて奴を切れ！」

「へっ！　大丈夫か？　隙を作る前にお陀仏すんじゃねえぞ？」

「がははは！！　任せろ！！」

　そう言うとジレットはバルザに向かい飛び出した。

「フッ！　性懲りもなく肉弾戦か……」

　ジレットはバルザへと拳を連打で突き放った。しかしバルザは両腕で全て防ぎ、大振りになったところでジレットの顔に拳を突き放った。

「ぐあ！！」

　そしてバルザは立て続けにジレットへと拳を突き放ち、バルザは一方的に殴られ続けた。

「ぐぼおっ！！」

　バルザの拳がジレットの腹部へとめり込むと、ジレットは前のめりに倒れてしまった。

「フッ、他愛のない……」

　その時、ジレットはバルザの足を掴み持ち上げた。するとバルザは背中から地面へと倒れた。

「ロコ！！」

　するとロコはすでにバルザの上部へと飛び込んできており、バルザの首へと剣を振り落とした。

「おおおお！！」

　バルザの首から血が舞った。

　が、力が足りず、剣はバルザの首を少し切ったところで止まってしまった。

「ヌウガアア！！！！」

　バルザは右拳を振り、ジレットの方へとロコを殴り飛ばした。二人はぶつかり一緒に吹き飛ばされてしまった。

「ぐわあああ！！」

　二人は辛うじて立ち上がりロコはジレットへと声を掛けた。

「はあはあ……ち、ちきしょう……この足じゃあ威力が出ねえ……決め手にならねえぞ……」

「ぬうーむ……なら俺がありったけのアークを拳に溜めて、奴のどてっぱらに風穴を開けてやる！」

「おいおい、そんなアークを溜めさせてくれる程優しい奴かよあいつは？　それにそんなにアークを溜められる程残ってんのかよ？」

「やるしかなかろう！！」

　ジレットは両拳をぶつけ合わせた。

　するとロコは自分の痛めた右足を見た。

「ジレット……」

「ん？　なんだ？」

　するとロコは小声で何かジレットに話した。

「なに！？　そんなことしたら、お前の……ただじゃ済まんぞ？」

「どのみちやらなきゃ二人ともお陀仏だ……」

「うぅむ……分かった！　だがやるからには手加減せんぞ！」

「当り前だ、手加減なんかしやがったら承知しねえぞ！」

　二人は拳を合わせると立ち上がり構えた。

　バルザは不敵な笑みを浮かべ 二人の元へと歩みを進めた。

「フッフッフッ……作戦は決まったか？　上手くいくと良いなあ……」

「ちっ！　余裕……ぶっこきやがってえ！！」

　するとロコが一人で剣を構え飛び出した。

「ん……？　 貴様一人か？？」

　ロコは剣撃を連発するがバルザはことごとく片手で振り払った。

「どういうつもりだ？　アークの籠っていない貴様の剣撃なんぞで俺を倒せるわけがなかろう！」

「うをおおおお！！」

　ロコは聞く耳を持たず一心不乱に剣を振りまわした。

「ぬううぅ……こざかしいわあ！！」

　するとバルザはロコをジレット側へと殴り飛ばした。

「があ！！」

「ぬおおおおお！！」

　すると今度はジレットが拳を振り上げバルザへと迫った。