第51話【心】

  ――キリュウ&スコッチ VS ブルーム


 キリュウとブルームは距離を取りにらみ合っていた。


 するとスコッチが声を上げた。


「キリュウさん! 俺も一緒に戦います!」


 それを聞いたブルームが反応した。


「ヘヘッ! 俺は二人まとめてでもいいぜ、その方が面白くなる……」


 キリュウは呟いた。


「スコッチ……もし私が奴に遅れを取るようなことがあれば、その時はなんとしてでも、この身体でやつの動きを止める……その隙に私ごと奴を切れ、お前はその時まで体力を温存しておくんだ」


「キリュウさん……」


「へへへっ! 玉砕覚悟って事か? そう上手くいくかな?」


「そう……上手くはいかんだろうな……」


「わかってるじゃねえか!」


「なぜなら玉砕ではなく、貴様が一方的に切られるだけだからだ!」


 キリュウは刀に手を掛けたままブルームに突っ込んだ。


「へっ! 言うじゃねえか!」


 キリュウはブルームの眼前へと迫ると刀を抜き切りかかった。ブルームは鎌で剣を弾くともう一方の鎌を振った。キリュウはそれを避け刀を振り下ろした。


 両者は一歩も引かない互角の戦いを繰り広げ、スコッチはそれを見て驚いていた。


「す、すげえ……」


 そしてブルームがキリュウの刀を弾いたところでお互い距離を取った。


「へへへっ! 俺の両鎌についてこれるなんてなかなかやるじゃねえか」


 するとキリュウは剣の持つ手を上げ、上段に構えた。


「へっ! なんだそりゃあ? 隙だらけじゃねえかよ、もう諦めたのか?」


 キリュウは鋭い眼光で睨み付けている。


 スコッチは不安げにそれを見守っていた。


「キリュウさん……」


 次の瞬間、ブルームがしびれを切らしキリュウへと突っ込んだ。


「ヘアッ!!」


 ブルームが鎌を振り下ろした瞬間、キリュウは瞬く間にブルームの眼前へと迫った。


「!!??」


 両者は交差し、ブルームがキリュウの方を振り返ると額には傷が付いていた。


「クッ!! き、き様……」


「…………」


 キリュウはゆっくりと振り返り、また上段に構えた。


「チイッ!!」


 キリュウは上段に構えたまま、すり足で徐々にブルームとの距離を詰めて行った。


 その時、ブルームが口から黒い糸状のものを吐き出した。


「!!??」


 キリュウはもの凄い速さで眼前へと迫ってきた糸を切り払った。


 しかしブルームはその瞬間に距離を詰め、キリュウの身体に両腕ごと糸を巻き付けた。


「へっへー!! 糸の速度に反応し、それを切ったことは褒めてやるよ!! しかしこのオームで出来た糸は巻き付いちまえば人の力で切れるような代物じゃねえ!! 勝負あったなあ!!」


「くっ!!」


 キリュウは両腕に力を込め糸を切ろうとするが、糸は固く切れる気配は無かった。


 それを見たスコッチは剣を構え叫んだ。


「キリュウさん!!」


 するとキリュウもスコッチへと叫んだ。


「来るなあ!!」


「ええ!?」


「まだだ……まだ来るんじゃない……」


 キリュウは鋭い眼光でブルームを睨み付けていた。


「へへへっ! この状況でもまだ何か出来るってのか?」


 ブルームが糸を手繰り寄せると、キリュウは少しずつブルームへと近づいて行った。


「ヘアッ!!」


「ぐうっ!!」


 そしてブルームはキリュウの顔を殴りつけた。


「へへへ……簡単には殺しやしねえぜ ……じわじわとなぶってやる……」


 ブルームはキリュウを何度も殴りつけた。


「がっ! ぐはっ!」


「ヘアーッハッハッー!! さっきまでの勢いはどうした!? このまま殴り殺してやるぜー!!」


 スコッチは剣を握る手に力を入れた。


「ぐううう……キ、キリュウさん……」


 キリュウは殴り続けられたが目の光は消えず、ブルームを睨みつ続けている。


「まだまだ元気そうだなー! いつまで耐えれるかなー!?」


「ぐうっ!」


 するとキリュウの腰が落ちた、しかしキリュウは足幅を広げなんとか耐えた。


「へへへっ! そろそろ限界か?」


「ふっ……そうでもないさ……貴様の攻撃なんぞ、二年でも三年でも耐えられそうだよ……」


「……言ってくれるじゃねえか……」


 ブルームが腕を振り上げた。


 すると痺れを切らせたスコッチがキリュウへと叫んだ。


「キリュウさん!!」


「来るな!!」


「キ、キリュウさん……?」


「今来たところで……お前がやられるだけだ……」


「で、でも……」


 ブルームはキリュウの顔を殴りつけた。


「があっ!」


「ふんっ! もういい加減飽きてきたな、そろそろ死ね」


 そう言うとブルームは鎌を構えた。

 

「ヘアア!!」


 そして鎌をキリュウへと横なぎに振った。


「!!!!」


 その瞬間、キリュウは糸から抜け出ししゃがみ込んだ。


 そして糸を掴むと今度はその糸をブルームへと巻き付けた。


「なに!? くっ!! 貴様!!」


「はあはあ……少し時間が掛かったがな……ようやく取れたよ……」


「クッ……少しずつ、ズラしていたのか……」


「ああ……殴って弄ぶ暇があったらとっと止めを刺すんだったな」


「チイッ!!」


 するとキリュウは剣を構えた。


「私は遠慮なくいかせてもらうぞ!!」


 キリュウは剣を振り降ろした。しかしその瞬間、ブルームに巻き付いていたオームの糸は消え、ブルームはキリュウの剣を弾き、鎌を振り下ろした。


「ぐああ!!」


 キリュウの胸から血が噴き出した。


「キリュウさん!! うわああああ!!」


 スコッチは我慢出来ずにブルームへと飛び出した。


「ヘアッ!!」


 ブルームはスコッチの剣を弾くと背中を鎌で切りつけた。


「ぐわあ!!」


 スコッチは背中を切られ地面に倒れてしまった。


「ヘッ! ハハハハハ!! この糸は俺のオームで作ってんだぞ!! 出すも消すも俺の自由なんだよ!! ヘハハハハハー!!」


 二人を倒したブルームは高笑いをした。


「ぐ、ぐうう……」


 その時、キリュウが刀を地面に突き刺し立ち上がった。


「ヘッ……急所は避けたか、しかしもうロクな反撃は出来まい……」


 ブルームは両鎌を構えた。


「首を掻き切ってやる!!」


 キリュウは刀を中段に構えると目を閉じた。


「ヘッ……さっきの構えと違うじゃねえか、もう腕を上げる力も無えか?」


「…………」


 ブルームが飛び出した。


「ヘアアッ!!」


 ブルームは右の鎌をキリュウの左側面から顔めがけて振り下ろした、キリュウは目を瞑ったまま、少し後ろに下がりギリギリで鎌を躱した。


 そしてキリュウが刀を返し上に突き上げると、ブルームの右腕は切断された。


「ウギャアアアアアア!!!!」


 ブルームは転がるように距離を取って逃げた。


「俺の!! 俺の腕があああ!!」


 キリュウは歩きながらブルームへと近づいた。


「来るなあ!! 来るなあ!!」


 途中、オームの糸を飛ばすもキリュウは完全に見切り、首を捻る動作や身体を少しズラすだけで躱していた。


 そしてキリュウはブルームの目の前へ来ると刀を構えた。


「待て! 待ってくれ! もう人間は食わねえし襲わねえ! 約束する! 頼む、見逃してくれ!」


「それをどう信じろと?」


「本当だー……信じてくれー……」


 そういうとブルームは鎌を地面に下げ頭も下げた。


「…………」


 その時、スコッチが息を吹き返した。


「う、うううぅぐ……」


「スコッチ……」


(……今だ!!)


 ブルームは鎌で土をすくい、一瞬目スコッチへを向けたキリュウの目に投げつけた。


「!!?? ぐっ!!」


「ヘアハハー!! 死ねー!!」


 ブルームが鎌を振り上げ襲い掛かった。


「え?」


 次の瞬間、ブルームの首が地面へ落ちた。


「ガヘ……な、なんで、見えて……?」


「俺の扱う剣術は相手の発する力の流れを心で読む、目を開こうが閉じようが関係ない……」


 ブルームの身体は倒れた。

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