第47話【舌】

「はあっ!」


 バルニルドはドリルに受け止められた剣を持つ手に力を込めた。


「おっと」


 するとドリルは受けた剣の力を横に流し、バルニルドの体制を崩すと足を払って地面に倒した。


「グウッ!」


 ドリルは倒れたバルニルドに剣を突いたが、バルニルドは横に転がりながら避け、その勢いで起き上がった。


「随分と素早い動きが出来るじゃないの」


「クゥ……ハア!!」


 バルニルドはドリルへと突っ込み剣撃を連続で放つと、ドリルはそれを受け、互いに譲らぬ剣撃戦が始まった。


「す、すごい……」


 それを見ていたスコッチとボウルはレベルの違う攻防に手を出せずにいたが、そんな二人にドリルは戦いながらも声を掛けた。


「おいおい、俺一人にやらせんなって、俺やられちゃうよ」


 それを聞いたスコッチは、バルにルドへと飛び出し剣を振り上げた。


「!!」


 それに気付いたバルニルドは素早く反応し、左手の剣をスコッチへと横なぎに放った。


 するとその時ドリルが呟いた。


「あらまあ、隙……作っちゃったな」


「!?」


 次の瞬間、バルニルドの右腕が突如凍り出した。


 そしてそのままスコッチが剣を振り降ろすと、バルニルドの左腕が飛んだ。ドリルがすかさず剣を横なぎに振ると、バルニルドはスコッチを蹴り距離を取った。


「いいじゃないスコッチ、よくやったよー」


 蹴り飛ばされたスコッチは倒れながらも返事をした。


「は、はい!」


「うをおおおお!!」


 すると今度はボウルがバルニルドへと突っ込むと、ドリルは声を上げた。


「お、おいおい、ちょっと待てって!」


 ボウルはバルニルドへ剣を振り下ろしたが、バルニルドは即座にその剣を振り払い、弾かれたボウルの剣は木の枝に突き刺さった。


「!!」


 バルニルドはボウルへと剣を突きだした。


「ハイウィンド!!」


「うわあ!!」


 その瞬間、ドリルの魔法でボウルは風を受けて吹き飛ばされた、しかしそのおかげでバルニルドの剣から逃れることが出来た。


 そしてドリルは飛ばされたバルニルドの左腕から剣を取り、ボウルへと投げ渡した。


「ほれ、これ使え、それとまわりをよくみろ、フィルに単独で突っ込むなって言われたろう?」


「は、はい、すみません……」


 そしてバルニルドを見ると声を掛けた。


「これは俺達の仲間の剣だ、返してもらうぞー!」


 するとバルニルドは形相を変え、ドリルへと突っ込んできた。


「ウウゥ……ウガアアア!!!!」


 ドリルは構えるとバルニルドを迎え撃った。


 そしてバルニルドがドリルの頭上へと剣を振り落とすと、ドリルはいとも簡単に払いのけてしまった。


「片腕じゃあ、バランスも取れんだろう……」


 ドリルは横なぎに剣を払い、バルニルドの腹部を切り裂いた。


「ほれ!」


 ドリルがスコッチとボウルに合図を送ると、二人は剣を突き立てバルニルドへと迫った。


「うをおおおお!!!!」


 そして二人ともバルニルドへ剣を突きさすと、バルニルドは倒れた。


「はあはあはあ……」


 ドリルは二人の元へ寄ると声を掛け、肩を叩いた。


「二人ともお疲れさん」


「ド、ドリルさん……」






  ――カリーVSカルゴ



その頃、カリーとカルゴは激しい空中戦を繰り広げていた。


「グヌヌ……な、なんだこいつは? なんで人間のくせに? なんで空飛べるんだ?」


「ちょいとした気流の流れと魔法を使えば、お前さん如きの兇獣きょじゅうの飛行能力くらい、わけねえぜ」


「グヌヌヌ……バアアアア!!!!」


 カルゴは口から強風を吐き出した、するとカリーは更に上へと上昇し風を避けると一気に下降しカルゴへと突っ込んだ。


「クウウッ!!」


 カルゴは羽を数本カリーへと飛ばした。


「甘い甘い」


 カルゴはその羽を全て凍らせ落とした。そしてカルゴの目前へと迫ると右手をカルゴの腹部に添えた。


「バニング」


「!! ウグアアアア!!!!」


 カルゴは全身燃え上がりながら地面へと激突した。


 カリーがカルゴの前へ降り立つと、カルゴは全身焼けただれ息絶えていた。


「こいつ一応鳥なんだよな? 兇獣きょじゅうって食えるのか?」






 ――ジレットVSグレッグ



 ジレットは両拳を互いにぶつけ合いながらグレッグに声を掛けた。


「さあ、俺達もさっさとおっぱじめようか!」


「ケッ! 筋肉馬鹿が! 武器も持たずに俺に勝てるつもりか!」


 グレッグは剣を振り上げ襲い掛かってきた。


「がははは!」


 ジレットはグレッグの剣撃を左腕で防いだ。


「なに!?」


 そして右拳を腹部にねじ込んだ。


「グハアッ!!」


 グレッグはその場にうずくまった。


「がははは! なんだ? もう終わりか?」


「ウググゥ……」

(な、なんだこいつ……生身で剣を受けやがったぞ……?)


 グレッグはジレットの両腕を見ると、濃度の高いアークで覆われている事に気付いた。


「ケッ、そういうことかよ……なら、そこ以外のところに当てりゃいいだけか!!」


 グレッグは再びジレットに襲い掛かった。グレッグは剣撃を連発するもジレットにはことごとく弾かれてしまっていた。


 するとグレッグは太い尻尾をジレットの横腹へと振った。


「ぬん!!」


 ジレットはグレッグの尻尾を両手で受け止めた。


「ケハアッ!!」


 するとグレッグは両手のふさがったジレットの頭上へと剣を振り落とした。


「ぬううん!!」


 しかしジレットは尻尾を持ち上げるとグレッグを振り回し地面へと叩きつけた。


「グハッ!!」


「がははは!! 軽い軽い!!」


 グレッグは辛くも立ち上がると、落とした剣を拾った。


「クソォ……馬鹿力め……」


 ジレットはグレッグに近づいてきた。その時、グレッグは近くに槍を持って倒れている兇獣きょじゅうに気付いた。


「シェハアア!!」


「む!?」


 グレッグは舌を長く伸ばすと槍を掴み引き寄せた。


「ケッケッケッ……」


「むう……貴様……」


「そうだ! 俺の得意な武器はこの槍よ!」


「そんなに舌が長かったのか……?」


 グレッグは槍を振り回しながらジレットの頭上へと飛んだ。


「うるせえ!! そこじゃねえだろ!!」


 グレッグは槍を連発でジレットへ向け突いた。


 ジレットは何発かは弾くも、槍はジレットの足や脇腹を擦った。


「ぬううん!!」


 ジレットが構わず右拳を放つとグレッグは後ろに飛びそれを避けた。


「ぬう……間合いが遠い……」


「ケッケッケッ……お前の短い腕じゃ俺には届かねえぜ」


「ぬううんん!!」


 ジレットは間合いを詰め攻撃を当てようとするも、グレッグは常に距離を取り、遠くから槍を突いた。


 ジレットの攻撃は全く当たらず、次第に傷が増えてきた。


「ケッケッケッ! 勝負あったなあ! いかに強力だろうと、当たらなきゃ意味がねえ!」


「うむ、確かに……」


「ケッケッケッ!! 諦めたかあ!? そしたらこのままじわじわとなぶり殺しにしてやるよお!!」


 グレッグは再び遠くから槍を突き放った。ジレットは腕をクロスさせて前に出し、急所だけは守っていた。


「なんだぁ!? 反撃はもう諦めたのかあ!? それとも俺が疲れるのでも待っているのかあ!?」


「ぬうううううぅぅ……」


 するとジレットの右拳のアークの輝きが濃くなってきた。


「ケヒャハハハ!! とっととくたばれやああ!!」


 ジレットはクロスしていた右腕を引き、防御は左腕だけになった。


「何やってんだあ!?  防御がおろそかになってきてるぞう!?」


「ぬおおおお!!!!」


 するとジレットはその場でグレッグへ向け右拳を突き出した。


「ケッケッケッ!! 馬鹿が!! そんなとこから届くわけねえだろう!!」


 すると振りぬいたジレットの拳から、こぶし大のアークの塊がグレッグへと向け飛び出した。


「!!?? ガッ!!!!」


 アークはグレッグの顔面に当たり、グレッグはその場で二回転して地面へ倒れた。


「がははは!! どうだ? 届いたろう!?」


 グレッグは辛うじて意識はあったが立てずにいた。


「グガアアァ……な、なんだ今のは……? どうなってんだ?? なにが起きた??」


 ジレットはグレッグの前に立った。


「おう! まだ意識があるとはな、大したもんだ!」


 そう言うとジレットは四つん這いになっているグレッグの頭頂部側から、グレッグの胴体に両腕をまわし、そのまま持ち上げた。


「う! うわ! なにを!? ちょ! まて!!」


「ぬうううんん!!!!」


 そして勢いをつけて、頭から地面にグレッグを打ち付けた。


「グアアアア!!!!」


 グレッグの上半身は地面にめり込み、グレッグは朽ち果てた。


「がははは!! いっちょ上がり!!」


 ジレットは右腕の力こぶを叩いた。

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