第46話【再開】

 パーラビア山地の先では、パールとスコッチが前軍と合流し、兇獣きょじゅうと戦っていた。


「ぐはああ!!」


 パールはガラモの火の玉を受け吹き飛ばされた。


「がはあ!!」


 スコッチもまた、バルニルドの肘を受け地面に叩きつけられた。


 他の兵士達も、兇獣きょじゅうのレベルが三獣兵さんじゅうへいへと上がったことにより、苦戦し始めていた。


「うをおおおお!!!!」


 その中の一人の兵士が一体の兇獣きょじゅうを殴り倒した。


「くっそう!!  遅れを取っちまった!!」


 するとその後ろからグレッグが切りつけてきた。


「うを!!」


 兵士はグレッグの槍を避けると手で掴んだ。


「うぐぐぐ……」


 それを見ていたもうひとりの兵士が笑った。


「ははっ!! おいジレット大丈夫かー?  手を貸そうかー?」


 しかしその兵士はカルゴと応戦中で、カルゴから羽が飛んでくると、その羽を切り落とした。


「おおっと!!」


 それを見たジレットは笑って言い放った。


「けっ!! 人の心配してる暇あんのかカリー!! 足元すくわれんぞ!!」


 ジレットはグレッグの槍を折ると殴り飛ばした。


 そしてカリーは飛び上がったカルゴをハヴィングで地面に叩き落とした。


 一方、バルニルドの肘を受け地面に叩きつけられたスコッチは、今にも剣で突かれようとしていた。


「くうっ!! くそ!!」


 その時、フィルがバルニルドの剣を弾いた。


「フィ、フィル!?」


 フィルとコストがスコッチの前に立ち、ガラモによって吹き飛ばされたパールの前には、バッジ、フィス、ボウルが立った。


「お、お前等……」


 そしてドリル達も他の兇獣きょじゅうの前に立ちはだかった。


 するとジレットがドリルに声を掛けた。


「おおドリルじゃねえかー! どうした? 随分とぞろぞろと連れてるじゃねえかー!」


「んん、まあな……ここにいるのはお前と、カリーと、後はシズと、あの二人か……」


「おうそうだ! ちいとばかし手こずってな! 前線に遅れを取っちまった!」


「そうか」


 その時、ジレットと戦っていたグレッグが剣を拾い、ドリルに襲い掛かるとドリルはそれを剣で受けた。


 それを見たジレットは一気にジャンプし距離を取った。


「なんだドリル! 代わりにお前がそいつとやるってか!?」


 ドリルはシラケ顔で呟いた。


「まあ、そうなるわな……」


「がははは!! じゃあ遠慮なく俺は先に進ませてもらうぜ!!」


 ジレットが先に進もうとしたその瞬間、ジレットの前にフィルが現れ両手を広げた。


「待ってください!!」


 ジレットは呆気にとられた。


「あん? 誰だお前?」


「ここにいる兇獣きょじゅうは彼らのレベルでは荷が重い!! 力を合わせて倒すんです!! 協力してください!!」


 ジレットはドリルの方を見た。


「おい、ドリル……こいつ何言ってんの……?」


 ドリルはグレッグを剣で押し返した。


「ああ、新人くんなんだけどよ、まあ……なかなか面白い奴なんだ、悪いがちと協力してやってくれよ」


「新人……?」


 ジレットはフィルの目を見た、フィルも真剣な目でジレットを見つめ返した。


「…………」


「…………」


「がははは!! なかなか良い目をしてるじゃねえか!! 良いだろう!! 今回の手柄は先に行った奴らに譲ってやるか!! おいドリルどけい!! そいつはやっぱ俺がやる!!」


「ジレットさん……」


 ジレットはグレッグに向いざま、フィルへと一言言い放っていった。


「おうフィルとやら、若えのに随分と実力を隠してるみてえだが、戦争は初めてみてえだな、その実力に騙って、せいぜい寝首を掻かれんなよ、 後ろの奴とかにな……」


「え?」


 その時、フィルの背後から兇獣きょじゅうが襲い掛かった。


「くっ!!」


 フィルは瞬時に反応し距離を取ったが、頬から血が垂れた。


「グヘッヘー……また会えるとは思っていたが……こんなところで会うことになろうとはなあ……」


 そこには以前、ガルイード襲撃時に対峙した兇獣きょじゅうガルドがいた。


「お前は……」


「ガルイードから出てきたのか……? ちょうどよかったぜ 、突然ガルイードへの手出しを止められて、もう会えないかと思っていたからなぁ……」


「手出しを止められて……? それはどういうことだ?」


「おっと、まあ、そんなことより折角の再開を楽しもう……」


 ガルドは体勢を低く構えた。


「…………」


 そしてフィルも剣を抜き構えた。






 ――――



 一方、パールとバッジは二人でガラモを挟み撃ちにしていた。


 ガラモがパールへと火の玉を吐くと、パールは横に飛び、火の玉を避けた。その隙に後ろからバッジがガラモに切りかかった。


「うをおお!!!!」


 しかしガラモの固さに剣が折れてしまった。ガラモはバッジに体当たりをして吹き飛ばした。


「ぐあああ!!」


「バッジ!!」


 ガラモはパールの方を振り返るとバールにも体当たりをしてきた。パールはそれを飛び越え、バッジの元へ走った。


「バッジ!! 大丈夫か!?」


「ああ、大丈夫だ……」


 バッジは起き上がった、そしてパールは呟いた。


「しかし奴は固すぎて切れない、どうすれば……」


「…………パール、 お前水の魔法使えたよな?」


「え……? ああ、だが俺の魔法力じゃあ、たかがしれてるぞ?」


「一か八かだ、俺に考えがある、俺の一撃が入る直前に、お前の水魔法を奴にぶち当ててくれ!」


「わ、分かった! やってみる」


 二人はガラモと対峙した。ガラモが二人に火の玉を吐くと、二人は左右に別れた。


 ガラモはバッジに向かい体当たりをしてきた、バッジが上に飛び上がり体当たりを避けると、ガラモはその後ろにあった大木にぶつかった。


 そしてバッジは叫んだ。


「今だ!! パール!!」


「おお!! ウォリズン!!」


 するとパールの両手の平から砲弾状の水が発射された。


「グゴ!!」


 パールの放ったウォリズンはガラモの背中に当たったが、ガラモは少しグラついただけであった。


「だ、 駄目か!?」


「おおおお!!!!」


 その時、頭上からバッジが剣を構えガラモへと迫った、バッジは剣先をガラモの濡れた部分に突き立てた。


「ゴオオオッ!!」


 するとガラモの身体の一部が割れた。


「よし!!」


 ウォリズンによって濡れたガラモの身体は柔らかくなっていたのであった。


「思った通りだ!! こいつは岩だから水に濡れると脆くなる!! パール!! どんどん打てえ!!」


「やるじゃねえかバッジ!! うをおおおお!! ウォリズンー!!!!」


 パールはウォリズンを連弾で放った。


「ゴオオオ!!」


「うをおおお!!!!」


 そしてバッジはすぐさま連斬し、ガラモをバラバラに切り裂いた。


「ゴアァ……」


「よっしゃあ!!!!」





 ――――



 そしてスコッチとコストはバルニルドと対峙していた。


 二人はバルニルドの左右から同時に切りかかった。


「うをおおおお!!」


 しかしバルニルドは瞬時に二人の剣を弾き返し、二人は吹き飛ばされた。


「うあああ!!」


 バルニルドはコストへと近づいた。


「……弱いな」


「う……くそっ! おおおお!!!!」


 起き上がり剣をバルニルドへと突き出したコストであったが、バルニルドによって 両腕を切り飛ばされた。


「うがああああ!!!!」


「な!? コストおおおおお!!!!」


 そしてバルニルドが剣を振り上げコストに切りかかろうとしたその瞬間、フィスとボウルがバルニルドの剣を防いだ。


「!?」


「くっそおおお!!!!」


 それを見たスコッチが、バルニルドへと剣を構え突っ込んだが蹴り飛ばされてしまった。


 そしてバルニルドが剣を弾き、フィスとボウルに横薙ぎに剣を振り回したが、二人ともその場を飛び離れ、かすり傷で済んだ。


「三人か……」


 バルニルドは切り落とされたコストの腕から剣を取ると、双剣で構えた。


 三人はバルニルドを囲むように陣取った。


 するとスコッチが低い体勢で突っ込み、バルニルドの片足を狙って剣を振った。


 バルニルドが片足を上げ剣撃を避けると、フィスとボウルが同時に剣をバルニルドの顔面へと振り落とした。


「はあああ!!!!」


 バルニルドは片方の剣で二人の剣を受けるも、片足の為踏ん張りが効かず、フィスとボウル共々地面に倒れた。


「がっ! はっ!」


 その時、一緒に倒れこんだフィスの腹部に、もう一方のバルニルドの剣が刺さっていた。


「フィス!!!!」


 スコッチが叫んだ。


 バルニルドはフィスの横にいたボウルの腹部を蹴り上げた。


「うぐっ!!」


 そしてうずくまるボウルの首へと剣を突きだしたバルニルドだったが、すんでの所でスコッチがボウルに飛びつき、抱きかかえるようにして転がり離れた。


 バルニルドはフィスを押しのけ立ち上がった。


「弱い……弱すぎる……」


 バルニルドはゆっくりと二人に近づいて来た。


「ぐ、ぐううぅぅ……」

(つ、強い……)


 その時、バルニルドは急に振り返り剣を振った。


「おっと! なんだ、不意打ちしようと思ったのに、なかなか勘がいいじゃない」


 現れたのはドリルであった、ドリルはバルニルドの剣撃を片腕で受け止めていた。


「ドリルさん!!」


「おー、 二人とも、こいつ強いから、俺一人にやらせないでね」


「は、はい!!」


 二人は立ち上がった。


 バルニルドはドリルが只者でないことを悟った。


「……強い」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る