第21話【出現】

「ごちそうさま! うまかったー! ありがとうラフターさん!」


「うんにゃあ、いいっていいって、んで、おめえさんこれからどうすんだ? 母さん探すにしたって、なんか当てがあんのけ?」


「いや……それが特にないんだ……とにかくしらみつぶしに倒せる兇獣きょじゅうを倒して、アジトを突き止めるしか……」


「そ、そりゃまた……大丈夫なんけ……?」


「やるしかないよ……絶対に見つけ出して助けてみせる!」


「そ、そうかぁ……お、おりゃぁ力もねえし、なんも手助けしてはやれねえけんど、せ、せめてこれ持ってけぇ」


 そういうとラフターはティグに薬草を渡した。


「いや、いいって、ラフターさんだって、いつまた兇獣きょじゅうに襲われるかわからないし、もしもの為に持っておいた方がいいって」


「いや、いいんだ、持ってけって!」


「きゃーーー!!」


「!!??」


 その時、外からなにやら悲鳴が聞こえてきた。


「こ、この声は? エリザ!!」


兇獣きょじゅうが出たのか!?」


 二人は外へ飛び出した。


「あ、あれは、カレットでねえか! まずいぞ! 逃げるにも相手が素早すぎる!!」


【カレット】

ラギットからなる兇獣きょじゅうアンジが孤島で出会った最初の兇獣きょじゅう


 カレットはその大きな牙を剥き、今にもエリザへ飛びかからんとしていた、エリザは娘を庇うようにカレットと対峙していた。


 ラフターはエリザに向けて声を上げた。


「エリザ走れ!! レナを抱えて目一杯走れ!! 振り向かずに全力で走るんだ!!」


「ううっ!!」


 それを聞いたエリザは娘のレナを抱き全力で走った、だがその直後、カレットは二人に向かい飛びかかった。


「ううをおぉ!!」


 ラフターは鎌を全力でカレットへと投げた。


「!!」


 がしかし、鎌はカレットには直撃せず、背中の毛を切り、逸れた。


「あああ!! しまったぁ!! 駄目だあ!!」


 カレットは大口を開けてエリザと娘のレナへ食いかかった。


「エリザ!! レナァァアア!!!!」


「!!!!」


 とその時、ティグの剣がカレットの牙を止めた。


「グガッ!!」


「え? あ、あいつ、いつのまにあんなとこまで!?」


「うをおおおお!!」


 ティグは剣を振り、カレットを押し返した。


「来い!! 俺が相手だ!!」


「グルルルゥゥ……」


 カレットは品定めをするようにティグを見た。


(しゃべらない兇獣きょじゅう……しゃべらない兇獣きょじゅうなら勝てる筈だ!!)


「うをあああ!!」


 ティグは剣を振りかぶりカレットへと落とした。


「??!! いない!?」


 カレットは瞬時に剣を避けていた、そしてティグの側面から爪を剥き出し襲い掛かった。


「うわわわ!!」


 ティグは爪を剣で弾きながら応戦した。


(は、速い……けど……無駄な動きも多い! 見切れる!!)


 ティグは剣で爪を弾き続けると、隙を見つけ大きな牙へと剣を横なぎに振った。


「折ってやる!!」


 しかし、牙は折れず、互いの動きが止まった。


「はあっ!!」


 ティグはカレットを押し返し、二人は距離を取った。


「グルルルゥゥウウ……グガアアア!!」


 カレットは再び牙を剥き襲いかかってきた。ティグも再び剣を構え横薙ぎに振った。


「今度は……こうだあああ!!」


 するとティグは咄嗟に構えを変え、剣をカレットのロへと突いた。


「グゴゴゴオオオ!!」


 カレットは口内を貫かれ倒れた。


「はあはあ……」


 その時、後ろからもの凄い剣幕でラフターが木の棒を振り上げ、 倒れたカレットへと振り落とした。


「このやろう!!」


 ラフターは木の棒を何度も何度もカレットの頭へと叩きつけた。


「お前等が!! お前等が!! このやろう!!」


「ラ、ラフターさん……?」


 ラフターは鬼の形相でカレットの頭部を叩き続けていた。


「このやろう!! このやろう!!」


「ラフターさん! も、もう!」


 ティグはカレットを叩き続けるラフターの肩を掴み、静止させた。


「はあはあ……はあはあ……」


「ラフターさん……」


「はあはあ……は、はははっ! ちっと興奮しちまったな! いやあ、まだ生きてたらいけねえって思ってよ! ははは!」


「あ、ああ……うん……」

(ラフターさん……やっぱりまだ殺された奥さんと息子さんの事を……)


「みっともねえとこみせちまったなぁ……すまんすまん……」


 そういうとラフターは立ち上がり、遠くへ逃げたエリザへと手を振った。


「おおーうい! エリザー! もう大丈夫だ!」


 エリザはそれを聞くと一礼し、こちらへと歩を進めた。


「それにしてもおめえさん、言うだけあってたいしたもんだなぁ、カレットをこんなあっさりと倒しちまうなんてよぉ」


「いやぁ、そんなことない……!! ラフターさん危ない!!」


 ティグは咄嗟にラフターを押し倒した。


 ラフターに向け、無数の石が飛んできており、ティグがラフターを庇うと、その石は後ろにあった木に当たり、木をへし折った。


「くっ!! あ、あいつは!?」


 そこに現れたのはワラミルであった。


「ワラミル!! ぐぅ……!!」


 ティグは剣を構えた。


 ワラミルはウネウネと動くとまた石を体内に取り込み、ティグへと向け放った。


「はあっ!!」


 ティグは剣を振り石を全て弾き落とすと、そのままワラミルへと切りかかった。


「はあああ!!」


 ティグはワラミルを真っ二つに切り裂いた。


「よし!! え?!」


 しかし、真っ二つに切り裂かれたフラミルは、ウネウネと動き出し、また一つにくっついた。


「な、なんだって!?」


 そしてさらに激しく動き始めると、人の形へと変わった。


「な! なにい!?」


 すると人型になったワラミルは、先程ラフターが投げた鎌を拾い、ティグへと襲い掛かた。


「 !? くっう!!」


 ティグは驚き、防戦一方になっていた。


(ひ、人型になるなんて! まさか……一度取り込んだことがある人物を……?)


 ワラミルは一心不乱に鎌を振り回したが、一向にティグに当たる気配はなかった。


(人型にはなったけど、動き自体はたいしたことない、これなら!)


「はああ!!」


 するとティグは一瞬の隙をついてワラミルの鎌を持つ腕を切り落とした。


「やった!!」


 それを見たラフターは歓喜の声を上げた。


「!!??」


 しかし、落ちたワラミルの腕は、またウネウネと動きながら地面を這い、本体へとくっついた。そして本体の切り落とされた腕はたちまち再生した。


「なんてこった!! あんなんどうやって倒しゃええんだ!?」


「だったら……」


 ティグは再びワラミルに突っ込んだ。


「切り刻んでやる!! でやああああ!!」


 ティグは今度はワラミルをバラバラになるまで切り裂いた。


「いよっしゃ!! ええぞティグ!!」


「!!??」


 その時、バラバラになったワラミルの破片の一つがティグの右手に付き、覆った。


「しまった!!」


 するとティグの右腕は自由を奪われてしまった。


「ティグ!!」


「ううぅ……ぐぐう……くそっ! くそっ!」


 ティグは左腕で右腕に付いたワラミルの破片を叩くも、水が跳ねるだけで意味が無かった。


「はっ?!」


 そうこうしているうちに、残りの破片達は繋がり合い、また人型へと戻ってしまった。そして近くにあった木の棒を手に取ると、ティグへと近寄り、その木の棒を振り上げた。


「くそっ!!」


「うをおおおお!! ティグゥゥゥウウウ!!!!」


 その時、ラフターが大きな石を掲げ、ワラミルへと落とした。するとフラミルはたちまち砕け散った。


「ティグ!! 大丈夫け!?」


「ラフターさん!」


「今、その右腕もなんとかしてやっから!」


 そう言ってティグの右腕に手を伸ばしたラフターの背後から、ワラミルがラフターを飲み込もうと襲い掛かた。


「ラフターさん後ろ!!」


「うわあ!!」


「フリーズン!!」


 その瞬間、ワラミルは凍り付いた。

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