第14話【激闘】

「うぐっ……」


「!!??」


「!!!!」


「!!!!」


 なんと、バルニルドの背中をティグが剣で切りつけていた。


「ティグ!!」


 サオはティグを見て歓喜の声を上げた。


「母さん!! ハナ!! コイル!!」 


 ティグは傷付いた三人を見て怒りに震えた。


「き、貴様……よくも、よくもみんなを……う!! うをおおおお!!」


 ティグは剣を振り上げ、凄まじい勢いでバルニルドに剣を何度も振った、バルニルドはティグの剣撃を防ぐも、その剣撃の重さに驚いていた。


「ぐっ! ぬんっ! はっ!」


「おおおおお!!」


 そしてティグは両手で剣を持ち振り上げると、 バルニルドへと渾身の力を込めて振り落とした。


「ぐおお!!」


 バルニルドはそれを防ぐも、衝撃で後方へと飛ばされた。


「はあはあ !  はあはあ!」


「ぐぬうう……」

(な、なんだこの小僧の力は……)


 バルニルドがティグの両腕を見ると、ティグの両腕からはうっすらとアークの光が放たれていた。


(剣を握る手にアーク……どうりで重い訳だ……)


 それを見たクラーケルも驚いていた。


「な、なんだあの小僧……アークを扱えるのか……? 兵士……なのか……?」


 その時、ハナが叫んだ。


「ば! 馬鹿!! なんで、なんで戻ってきたのよ!?」


 それを聞いたティグは静かに口を開いた。


「ごめんハナ……確かに俺、強くなりたい……強くなって、多くの人を守りたい……」


「だから私たちがこうやって!!」


「でも!! 今、目の前で苦しんでいる仲間を放って行くなんて俺には出来ない!! 目の前にいる大切な人を守れない兵士にならなれなくていい ! !  そんな奴が……そんな奴がこの先多くの人を救えるなんて、俺は思わない!!」


「ティグ……ば、馬鹿……」


 ハナは気を失った。


「ハナちゃん!!」


「ハナ! ……待ってろ、今助ける! うをおおおお!!」


 ティグはバルニルドへと突撃して行った。


 激しい剣撃戦が始まり、辺りには衝撃音が響き渡っていた。


「おおおおお!!」


 ティグの重い剣撃を受ける度に、 バルニルドは受けた剣を流され、次第にティグの剣撃への防御が間に合わなくなってきていた。


「おりゃあああ!!」


 ついにはティグの剣先がバルニルドを捕らえ、バルニルドの肩を切りつけた。


「くっ……」


 バルニルドは少し距離を取った、それを見たクラーケルは驚いていた。


「な、なんだあの小僧……バルニルドを押していやがる……あんな小僧がなぜ……?」


 サオはそれを不安げな顔で見ていた。


「ティグ……」


 ティグのアークが更に高まると、再びバルニルドへ切りかかった。


「うをおおお!!」


「!!??」


 その時、クラーケルは何かに気付き、バルニルドへ叫んだ。


「バルニルド!! 受けなくていい!! 避けろ!!」


「!?」


 それを聞いたバルニルドはティグの攻撃を受けずに避けた。


「なっ! くそっ! はっ!」


 ティグは何度も剣を振りまわすも、バルニルドはそれを全て避けた。


「ケッケッケ……やはり……兵士でもなんでもねぇ……両腕にアークを集中させたんじゃなく、両腕からしかアークが出てねえってだけだ、別に扱えているわけではねえ、なら、あの剣撃さえ受けなければ結局はただのガキだ……」


 ティグはその後何度も剣を振りまわすが、バルニルドはそれを全て避けた。


「はあはあ!」

(くそっ! 当たらない!  落ち着け! 冷静になるんだ!)


「バルニルドは剣を構えることもなく、ゆっくりとティグに近づいて来た。


「どうした? さっきまでの勢いは? もう終わりか?」


(冷静になれ、冷静になれ……相手の動きをよく見て……動きを最小限にするんだ……)


 ティグは再び剣を構え、バルニルドへ飛びかかった。


「はああああ!!」


 ティグが剣を脳天へと落とすと、バルニルドはそれを左に身体をずらし躱した、次にティグが 横なぎに剣を振ると、後ろに少し下がりそれも躱した。


 そしてティグの振り終わりに合わせてバルニルドが剣を振ると、 ティグの頬をかすめた。


「うわぁ!!」


 ティグはたまらず距離を取った、それを見たクラーケルは高笑いをしていた。


「クエーケッケ!! やっぱりガキだなぁ! あんなかすり傷程度でビビリ過ぎだろう!」


「く、くそう……」

(奴も最小限で動いている……つ、強い……)


「もういいだろう……終わりにするぞ」


 バルニルドは剣先についたティグの血を払うと再び近づいて来た。


「くっ!」


 ティグは剣を構えた。


 バルニルドはティグへと突っ込み剣を振った、ティグはバルニルドの動きをよく見ながら剣撃を躱した、しかしバルニルドは二撃三撃と攻撃を続けた。


「くぅ! はっ!  ぐっ!」

(は、速い!  躱しきれない!!)


 ティグは躱しきれず、何発かは剣で受けたが、 反撃が出来ない。


「ぐ! くそおお!!」


 ティグは強引に反撃に転じた。


「甘い!!」


 バルニルドはそれを避けると、ティグを切りつけた。


「うああああ!!」


 ティグの胸元から血が飛び散った。


「ティグ!!」


 サオは顔を真っ青にして叫んだ。


「はあああ!!」


 そしてバルニルドはティグを何度も切りつけた、ティグの身体は見る見るうちに血だらけになっていった。


「ぐああああ!!!!」


 全身血だらけになったティグは、それでも倒れずにバルニルドに向かい、剣を構えていた。


「はあーはあーくそ、くそぉぉ……」


 それを見たクラーケルはさらに高笑いをした。


「ケヒャーッハッハー!! バルニルドの奴もおもしれえ事しやがる! 一気に殺してやれば良いものを、じわじわとなぶり殺すつもりかぁ!?  たまんねぇなぁー!  ケヒャーッハッハー!!」


 サオは手を強く握りしめ震えていた。


「ううぅぅ……」


 その時、サオが叫んだ。


「ティグ!! 逃げて!! 逃げるのよ!!」


「ああん?? あの女……何勝手なことぬかしていやがる、こんなおもしれえ殺戮ショーに水を差すんじゃねー!」


 クラーケルは再びサオに小石を投げると、小石はサオの背中に当たり、サオは前のめりに倒れた。


「あああっ!!」


「か! 母さん!!」


「ケッケッケッ! なんだ、この女お前の母親だったのか? こりゃあもっとおもしろくなってきたなあ……愛する息子が目の前でなぶり殺しにされるのを見たら、人間の母親ってのはどんな反応すんだろうなぁ?  ケヒャーッハッハー!!」


「うううぅ……ティグ……逃げて……」


 ティグは怒りに震えていた。


「き、貴様……よくも……よくも母さんを……許さん、許さないぞーーーー!!!!」


 その時ティグの両腕のアークの輝きがさらに増した、そしてティグが両手で剣を掴み構えると、剣からも アークの輝きが放たれた。


「な!? なに!?」


「うあああああああ!!!!」


 そしてティグは剣を振りかぶり、その場でクラーケルへと振った。


 するとティグの振った剣の剣先からアークの光が放たれ、一直線にクラーケルへと飛んでいった。


「あ、え?!」


 その光がクラーケルを通過すると、クラーケルの左腕が地面に落ちた。


「ぎ、ぎゃああああああ!!!!」


「はあはあはあ……」


 それを見たバルニルドは驚いていた。


「な、なんだ今のは……? アークを、剣撃に乗せて飛ばしたのか?」


「ティ、ティグ……?」


 しかしアークを放ったティグは体力を著しく消費し、もはや立っているのもやっとの状態であった。


「がああああ!! ぐううううう……!! くそうっ!! あのくそ餓鬼い!! 俺様の!! よくも俺様の腕を!! 殺してやる!! 殺してやるぞお!!」


 クラーケルは高く舞い上がり右手を上げた、すると右手に黒いオームが集まり、こぶし大程の球体になった。


「死ねえええい!! ガルボドム!!」


 クラーケルはティグに向け、その黒い球体を放った。


「ううう……ああ……」


 ティグは満身創痍でもう避ける術もなかった。


「ティグ!!」


 その時、サオがティグの元へと走った。


 サオはティグに飛びつき、抱きかかえるように押し倒し球体を避けた、するとクラーケルの放った黒い球体は地面へと落ち、その瞬間、爆発した。


「ああああっ!!」


 サオとティグは爆風によって転がるようにその場から数メートル程飛ばされた。


「ちぃいいっ!! あのくそ女!! いつの間に!?」


「ティグ!! 大丈夫!? しっかりして!!」


「か、母さんに、逃げて……」


「何言ってるの!! 一緒に逃げるのよ!! 今動けるようにしてあげるから!!」


 そういうとサオはティグの身体に手を当てた。


「リスナ!」


「あの女!? また余計な事をしやがって!!」


 クラーケルはまた右手を構えたが、途中で止まった。


「いや、あの女は殺しちゃまずいんだ……くそっ! 面倒くせえ!!」


 そう言うとクラーケルはサオに向け、また小石を飛ばした。


「うぐう!!」


 小石はサオの背中に当たったが、サオはそれでも構わずリスナを続けた。


「なんだと!? くそが!!」


 クラーケルはサオの後頭部に狙いを定めた。

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