第5話【コツ】
―― 学校の裏庭
ハナはサガネより柔らかい素材で出来ている、スレッチと言う防具無しでも訓練できる剣をティグの元へ投げた。
「拾いなさい!」
「な、なんだよ? 一体なにをするってんだよ?」
「今日から私がみっちり稽古をつけてあげるわ!」
「稽古って……お前、俺より剣の腕は無いじゃないか」
「うるさい!! コイル!!」
ハナはコイルの元にもスレッチを投げた。
「え? 俺? 俺だってティグには勝てないよ……?」
「二人よ!! 私とコイルの二人掛かりで相手をするのよ!!」
「お前なぁ……無茶言うなよ……」
「問答無用!! たああぁぁあ!!」
ハナはティグに向かって行った。
しかし、ティグはハナの攻撃をなんなく捌いた。
「コイル!! なにしてんのよ!! 二人掛かりじゃないと意味ないでしょ!!」
「ええ……? う、ん……ええーい! どうにでもなれ! やぁぁあぁ!!」
コイルとハナは二人でティグに突撃した。
「うを!!」
ティグがハナの攻撃を受けると、コイルのスレッチがティグの胴を打ち払った。
「痛!!」
そしてコイルへとティグがスレッチを振ると、後ろからハナに頭を叩かれた。
「あだ!!」
ティグが頭を抱えると、二人同時にスレッチを振り下ろされた。
「うわあぁ!!」
ティグは二人同時の攻撃を捌ききれず、倒されてしまった。
「ティ! ティグ! 大丈夫か?」
「立ちなさい!!
コイルはただオロオロするばかりであった。
「んにゃろ……やってやらぁ!! かかってこい!!」
「ようし……いくわよ……コイル!!」
「お、おう!」
「たああぁぁあ!!」
「やぁぁあぁ!!」
三人はの特訓は夜遅くまで続いた。
――――
「ぐああ!!」
ティグは地面に倒れた。
「はあはあ……」
「き、今日はこれくらいにしといてあげるわ! また明日も明後日も、私達を倒せる様になるまで続けるからね!! 覚悟しなさい!!」
「はあはあ……上等だ!! すぐに倒せるようになってやるさ!!」
「はーん! どうかしらね! 一度負けたくらいでウジウジしてるような男に出来るかしら?! 逆に私一人に負けるようになっちゃったりしてね!!」
「なにおー!! ぜーったい負かしてやる!!」
「やれるもんならやってみなさいよー!!」
「おー!! やってやらあ!!」
睨み合う二人を見てコイルは微笑んだ。
「はは……」
(まったく……この二人は仲が良いんだか悪いんだか……ハナも女の子なのによくやるよ……まあ、でもおかげで元のティグに戻ったなぁ)
三人の特訓は連日に及んだ。
「はああぁ!!」
「ぐああ!!」
(だ、駄目だ……二人同時に来られると避けきれない……どうすればいい……? もっと早く……いや……早く動いた所で限界がある……まだ二人だからいいけど、これが
ティグはふと、城でのフィルとの立会いを思い出した。
(あいつの動きは早かったな……いや……? 早いと言うより……無駄がなかった……動きに無駄がなかった……)
「ティグー!! ボケっとしてんじゃないわよー! 行くわよー! たああぁぁあ!!」
(無駄なく……)
ティグは振り下ろされたスレッチを、左足を引き身体スレスレでかわした。
「おりゃあぁぁ!!」
次に、コイルが横薙ぎに打ってきたスレッチを、顔だけ少し引き、またもスレスレでかわした。
「!!??」
(二人ともまだ体勢が戻ってない!? よし! 今だ!!)
ティグは即座に二人の頭を打ち払った。
「あぁ!!」
「うが!!」
二人は地面に倒れた。
「はあはあはあ……」
「うぅ……一体なにが……?」
「は! はは! 見えた!! 見えたぞ!! もっとだ!! もっとかかってこい!! 忘れないうちに!!」
「こ、こっの……調子に乗るんじゃないわよ! コイル!!」
「お、おう! なんだがわからんけど、行くぞティグ!!」
「おー!! どんどんかかってこい!!」
「おりゃあぁぁ!!」
「やぁぁあぁ!!」
――数週間後
三人は相変わらず特訓を続けていた、そしてティグはもはや二人を完全に圧倒するまでに成長していた。
「はあはあ……」
「も、もう駄目だ……二人掛かりでも勝てやしねぇよ……」
「へへ! だいぶコツがわかってきたよ! もう二~三人増やしたいくらいだ!!」
「ふんっ! 調子に乗っちゃって! 兵士やめるー、なんて言ってたのはどこの誰かしら?」
「なにおー!!」
「なによー!!」
「まあまあ……」
その時、後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
「ふん、貴様、まだ剣術の真似事を続けていたのか?」
「?! お! お前は!!」
そこにはフィルの姿があった。
「俺やサルバ隊長が言った事の意味がわからなかったのか? 貴様に兵士になる才能は無い、
「ぐうぅ……」
ティグは萎縮している。
フィルはゆっくりとティグに近付いた。
「あれだけこっ酷くやられてわからなかったのか? なんならまた思い出させてやろうか?」
フィルはティグの頭を抑えつけた。
「ぐうぅ……」
「兵士になり、
フィルはティグの頭を軽く回した。
「どうした? ビビってんのか? 人間にビビるような奴が
バチーーーン!!
「!?」
「!?」
「!?」
ハナがフィルの頬を思いっきり叩いた。
「な?! 貴様?!」
「あんた一体なんなのよ!! あんたにティグの何がわかるってのよ!!」
「お! おいハナ!! やめろ!!」
フィルにさらに突っかかっていこうとしたハナを、コイルが必死で抑えた。
「兵士だかなんだか知らないけどねえ!! ティグが特訓したらあんたなんかより全然強くなるんだからね!! ティグはこの国一番の兵士になるんだ!! あんたなんかすぐに追い越すんだから!! あんたこそ泣き面かくんじゃないわよ!!」
「ハ、ハナ!! もういい!! 行くぞ!!」
「いくなーい!! あたしが相手だー!!」
「も、もういいから!!」
ハナはティグとコイルに連れて行かれた。
「…………」
(な……なんなんだあの女は……)
フィルは叩かれた頬を触った。
(ハナ……とか言ったな……)
フィルはハナ達が去っていった方をしばらく見ていた。
―― さらに数日後
「たあ! やあ!」
「ふわ! だりゃ!」
ティグとコイルは二人で稽古をしていた。
「ちょとまて、ちょとまて!」
「ん?」
「俺一人でティグの相手はキツイよー……ハナの奴遅いな……なにやってんだ?」
「あいつがこんな遅れるなんて珍しいよな、いつも誰より時間にはうるさいのに」
コイルはハナの真似をして見せた。
「ちょっとあんたなにしてたのよ!! 時間も守れないなんて兵士失格よ!!」
「あははは! 似てる似てる!」
「…………」
「…………」
「どうするか?」
「うん……」
「そうだ!! 魔法の練習しようぜ!! こないだハナがコツ教えてくれたじゃん! !やってみようぜ!!」
「お! いいね!! ようし!! じゃあ俺から!! 見てろ……」
そういうとティグは構えた。
―― 以下本人イメージ
ティグは両拳を握り腰を深く落とした。
「はぁぁぁぁあああああ……」
さらに拳に力を入れた。
「はぁぁぁぁあああああ!!」
ティグの髪が逆立ち始める。
「ああぁぁぁあああああ!!!!」
ティグの足元が揺れ始めた。
「がああぁぁぁあああああ!!!!」
ティグの周りからオーラのようなものが吹き荒れた。
「がああぁぁぁあああああ!!!!」
風が吹き荒れ、ティグの周りには雷が落ちた。
「ぬぅああああぁぁぁ……」
ティグはゆっくりと右手を引いた。
「はぁぁぁぁあああああ……」
ティグの動きが止まった。
「はああー!!!!」
次の瞬間、ティグは右手を開き、前に突き出した。
―― 本人イメージ終了
ポンッ!
ティグの右手から2センチほどの炎が出て、足元に落ちた。
「……」
「……」
「ぎゃあっははははは!! なんだろそれー!! いーひひひひひふ!!」
コイルが笑い転げてる横で、ティグはワナワナと震えていた。
「ぬ……ぬぐぐぅ……ど、どういうことだ……?」
「いーひゃっひゃっ!! お前、構えだけはど迫力で肝心な魔法がそれって!! いーひひひひ!! あー腹痛い!!」
「ぬうう……なんだよ! そんなん言うならお前やってみろよ!!」
「あははは! はっはっ! あー……しょうがねえなぁ……俺様が手本ってもんをみしちやるよ! 君ちょっと危ないから離れてなさい……しっしっ!!」
そういうとコイルはティグを離れさせ、構えをとった。
―― 以下本人イメージ
コイルは両拳を握り腰を深く落とした。
「はぁぁぁぁあああああ……」
さらに拳に力を入れた。
「はぁぁぁぁあああああ!!」
コイルの髪が逆立ち始める。
「ああぁぁぁあああああ!!!!」
コイルの足元が揺れ始めた。
「がああぁぁぁあああああ!!!!」
コイルの周りからオーラのようなものが吹き荒れた。
「がああぁぁぁあああああ!!!!」
風が吹き荒れ、コイルの周りには雷が落ちた。
「ぬぅああああぁぁぁ……」
コイルはゆっくりと右手を引いた。
「はぁぁぁぁあああああ……」
コイルの動きが止まった。
「はああー!!!!」
次の瞬間、コイルは右手を開き、前に突き出した。
―― 本人イメージ終了
ポンッ!
コイルの右手から1センチほどの氷が出て、足元に落ちた。
「……」
「……」
「ぎゃあっはははははー!! なんだよそれー!! いいっひひひひ!! それじゃあ水一杯冷やせねーよー!! あーっはははは!!」
「な……にぃ……」
コイルは自分の両手を見て、驚き震えていた。
「あははは……は、はぁ……」
「ハナの奴来ねぇな……」
「うん、俺らだけじゃ無理だな」
「はーあ!」
コイルはその場に寝転がった。
「ふう……」
ティグもその場に寝転がった。
「あいつがいないと、いまいち締まらないよな」
「うん……だいたい、言い出しっぺが遅れるってなんだってんだよな」
「まあそう言うなよ、あいつなりにお前の事を思って……?!」
コイルは何かに気付き、身体を起こした。
「だいたい、あいつ口が悪過ぎんだよ、女だったらもうちっとこう……」
「お、おいティグ……」
「ん? どうした? ハナ来た?」
「あ、あれ……」
コイルは少し震えながら、王国の方を指差した。
「んー? なんだよ? どうした?」
ティグも身体を起こし、コイルの指差す方を見た。
「な!?」
なんと、王国に無数の
「き、
「な、なんで……? 今までこの王国に
「そ、そんなの知るかよ……」
「おっ、おい……」
「え?」
「まさか、ハナが来ないのって……」
二人は目を合わせた。
「……」
「……」
二人は王国へと駆けて行った。
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