第4話 清明学園
お昼過ぎ。
母さんに呼ばれてリビングへと向かうと、テーブルには何かの雑誌が広げられていた。……学校だろうか?
「母さん? これは? 」
「――あっ! はーくん! これはね! はーくんが通うことになった高校のパンフレットよ!」
「パンフレット?」
そう言われ俺は母さんからパンフレットを手渡される。
見てみると、そこには清明学園という名前とともに綺麗で立派な建物が写っていた。
「凄い大きい学園だね。俺は此処に通うのか……。」
……楽しみだな。俺の理想の学園生活の舞台となる場所だ。つい妄想が膨らんでしまう。
「そうよ! それと――」
「うん?」
「――はい! これがさっき届いたのよ!」
そう言って母さんは、茶封筒らしき物を渡してきた。
中を見ると、そこには清明学園の合格証明書と入学式の案内状が同封されていた。
「……合格証明書。それと……入学式、か。」
合格証明書には、清明学園入学おめでとうの言葉とともに学園長の祝いの言葉が長々と綴られていた。
…………いや長いな、原稿用紙一枚分以上はあるんじゃないか?
若干引きつつも、お祝いの言葉という事なので読んでみることにした。
………………
………………
………………
………………
………………
――ふむふむ……なるほど。文面から学園長の俺に対する感謝の気持ちが溢れ出ていた。
学園の経営者からすれば、男性の入学は経営上極めて肝要なのだろう。 ……世知辛い世の中だ。
文章を要約すると、「私立の学園を作り生徒を集め、学園として運営することには成功したものの、一向に男子の入学者が現れず困っていた。学園長自ら中学校に説明会を開いて男子生徒が学園生活を送りやすいことをアピールするも撃沈。学園の生徒からは目安箱に「男子の生徒がいませんが?」と言われる始末。学園の維持そして更なる発展には男子を入学させる必要がありとても困っていた。……その時、俺からこの学園に入学を希望するという連絡が入った。それはまさに我々の危機を救う神のようであり――――」と書かれていた。……大丈夫だろうかこの学園。
それ以降は、「学園の教職員もまさか男子生徒が入学を希望してくれるとは夢にも思って無く、望外の喜びと共に合格通知の連絡が遅くなってしまって大変申し訳ありませんでした! これ以降はこのようなことがないように――――――(略)――――ですので是非とも清明学園をよろしくお願い致します!」と、学園長がとは思えない謙った様子で書かれいた。……文面からわかる通り本気で困っていたようだ。
……実はこれは仕方がなかったりする。何せこの世界では男性が少ないのだ。
高校は女性にとっては男性との出会いの場。
学校を運営するなら男子の存在は不可欠と言ってもいい。
しかしこの世界にも男子を独占している学校がある。――そう、男子校だ。
男子校は男子が少ないこの世界にも存在している。
不思議に思うかもしれないが、逆にこの世界の男子にとっては男子校こそが理想なのだ。
男子校に行きさえすれば、生徒から教員までもが一人残さず男子だからだ。
よって余計に男子の数が減り、共学高なのに男子がいない何てことがよく発生してしまう。
では何故男子校があるのに共学高に行く男子がいるのか?
その答えは、大きく分けて2パターン存在する。
1つ目は、家庭環境によるものだ。
自分の家の方針で共学に行かされ、良い所の娘と結婚させられるパターン。
もしくはお金がないため、共学の給付金目当てで共学に行くパターン。……意外にもこのパターンは多いらしい。
2つ目は、男子校に入れなかったからだ。
このパターンは共学に行く男子の大部分を占めている。
何故なら男子校が少ないからだ。先にも述べたが男子校は生徒と教員全てが男子である。
――つまり学園長も男性である必要がある。
この世界の男性は結婚すると、大抵前世で言う専業主婦になる。……もしくはニート。
そのため、男性が教師を務めることはほぼ無い。ゆえにそれに比例して男性学園長も少ない。
なので男子校は少なく、毎年100倍はくだらないと言われている。
よって共学高には、男子校からの生徒が流れてくる。
しかし、この世界の男子なら共学高に行くことになれば、なるべく男子の多いところや給付金が多いところに行くだろう。そしてそういう所は偏差値が非常に高く学費も高いため、親が社長などのお嬢様が大多数を占めることになり、男子はどうせ結婚するならお金のある女性としたいので、男子がお金持ちや貴族などの上流階級の家に独占され、一般家庭では結婚することが非常に難しくなっている。
……どこの世界も生まれが大事ということだ。不平等だが。
……という事で、何故学園長が、こんなにも長い祝いの言葉を書いたのかが伝わったかと思う。
それほどに男子をめぐる情勢は共学高には不利なのだ。
そして既に察してしまった人がいるかもしれないが、清明学園は共学高の中でも所謂高偏差値の学校ではない。
どちらかと言えば平均より少し上の部類だ。なので文面で察せられるように、これまで男子が入学したことは無く俺が初の男子生徒という事になる。
……都合がいい気がするのは気のせいだろうか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます