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 やはり知名度抜群のようです。突然、ドンチャリンコン号が現れたことで、にわかにポートは騒然となりました。


 どっこい、そんな中にもクレオパトラさんは、クスノキファミリー達ともども同施設内の売店へ。そこで単2乾電池を購入の後、さっそくそれを入れ替えれば、テイトの言う通りゴン太は再び動き出しました。


「ああ、よかった。では皆さん…ひとつ、お茶でも飲んでいきましょう。この度のお礼に、私がご馳走します」


 ゴン太を胸に、クレオパトラさんがそう言えば、


「では、お言葉に甘えまして〜」


 テイトを始め、シトたち3人も頷きました。


 かくして彼ら5人は、当施設の一角にある洒落たカフェに入店。周囲の人々の視線を一身に、ポートを一望できる窓際の席に着きました。


『あれが、伝説の女宇宙海賊クレオパトラか…』


『なんか、カッコいい…』


『美人だなー。まるで人形みたいだ』 (はい、《人形の身体》です)


 といった周りの声の中、やがて話題はユアさん絡みの事に。


「…ということで、我々は訳も分からぬまま、そのゲオルゲ博士のところから逃げて来たのです〜」


 ラジカセや湯気の立つカップ等を眼下に、テイトがクレオパトラさんに、この度の経緯を語りました。


「なるほど。そういうことでしたら、これから私が、ユアさんをティア星まで送り届けましょう。無論、心配はいりません。困っている人につけ込むようなマネは、この私のプライドが赦しませんのでね」


 テイトの向かい。これまた可愛いイチゴパフェを前に、クレオパトラさんが明言しました。


「いかがかな〜、ユアさん〜」 


 隣のテイトを始め、一同の視線がユアさんに注がれます。


「はい、よろしくお願いします」


 昂然たるクレオパトラさんの態度を目に、安心感を抱いたようです。彼女に向かって、ユアさんが一礼しました。


 ちなみに、そのユアさんの顔等が、いまや透き通った緑色なのは、彼女がメロンソーダを注文して飲んだからです。

 

 ともあれ、クレオパトラさんが一緒というなら安心です。それはそれは最強のボディガードとなってくれるでしょうからね。


 

 しばらく後…


 クスノキファミリーとの別れを惜しむと共に、いつかの再会を約束。そのユアさんを乗せたドンチャリンコン号は、同ファミリー他、多くのギャラリーに見送られつつ、このポートから飛び去っていきました。


「…さあ〜、我々もトウキョウヘ向かおう〜」


「はい〜、あなた〜」


「了解です〜、パパ船長〜」

 

 そしてまもなく、クスノキファミリーもまた自らの船に。一路トウキョウを目指して飛び立つのでした。


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