13
『クスノキファミリーの皆さんっ、ちょっとお聞きしたいことがっ…』
おや、今度は少し急くような女性の声が、同じく車内の通信機から聞こえてきました。
「もしや、この声は〜…」
「クレオパトラさんの声です〜」
テイトの隣、助手席のシトが言いました。
はい、実はその通り。いつの間にやら例のドンチャリンコン号が、ごごごごー…っと接近して来た為、その大きな船体が生み出す影によって、ここら一帯が暗くなっていたのです。
また、先のヘリコプターの乗員の悲鳴も、同船の出没ゆえに他なりませんでした。
『あ、あれは、最強の女宇宙海賊クレオパトラ永世11段の…!』
大きなエクレア状の下に、幾本ものワイヤーで吊られたゴンドラ風…と、あの気球のような形の宇宙船を目に、たちまち反転。ヘリコプターときたら、そのまま逃げていってしまいました。
ふ〜む、そんなにも恐れられる存在だったんですね。あのクレオパトラさんって御仁は。その実、可愛いもの好きという上に、このドンチャリンコン号のネーミングやデザイン等を鑑みるに、割とひょうきんな方とも思えましたけどね。
まあ、なにはともあれ、ここは彼女のおかげで助かりました。危険も去ったことから、さしあたりテイトが、その畑道の端に車を停めます。
『…とにかく、その辺りで待っていて下され。いま船を着陸させますゆえ…』
「分かりました〜」
テイト返答の後、彼らクスノキファミリーは、とりあえずユアさんも含めて車外へ。そこで、クレオパトラさんを待ちます。
一方、ドンチャリンコン号は、ぼちぼち近くの牧草地に着陸。ほどなくして、ゴンドラ風の中から現れるやクレオパトラさんが、そのマントをなびかせながら、また何やらあの『ゼロ』を手に、クスノキファミリー達の元へ歩み寄って来ました。
で、いったい何の用かと思えば、
「…このワンちゃんが…この(ゼロあらため)ゴン太が、急に止まって動かなくなってしまったのです」
それだけ?
しかも、
「どれどれ、ちょっと見せてくださいな〜」
テイトが調べたところ、それはタダの電池切れと判明。
「では、ポートの売店で電池を買いましょう〜」
という訳で、忙しくもクスノキファミリー達は、再び車へ。またクレオパトラさんも、同じくドンチャリンコン号に乗り発進。ともどもポートへ向かうことになりました。
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