12

「…わ〜、いっぱい集まって来ました〜」


 その後、エントランスへと駆ける途中、ふとシトが振り返れば、後方から7、8名もの警備員たちが追い縋って来るのが窺えます。


 しかも彼ら、皆揃って銃を所持しているようです。無論、それで撃たれたら無事では済まない…


 ずだーんっ…!


 ずだーんっ…!


 おっと、言ってる先から、彼らが連続で発砲してきました。


 かと思えば、


「わ〜…」

 

 その放たれた弾丸のうちの1発が、なんとテイトの背に命中してしまったではありませんか。


「あなた〜」


「パパ船長〜」


「キャプテン・テイトっ」


 彼の左右を走りながら、一同が声を上げました。


 が、


「あ〜、大丈夫だ〜」 

 

 あら不思議。倒れることもなく、なおテイトは元気に走り続けています。


 あ、なるほど。そもそも、その身が人形だけに、ダメージがないんですね。

 

 見れば、彼の背中から胸にかけて、小さな穴が空いちゃってますけどね。


 まあ、あとでパテとかで埋めておけば大丈夫でしょう。あっさり。


 さあ、そうこう言っている間に、やっとこ一同が、ここエントランスから外へと飛び出しました。


 で、先の浮遊自動車に揃って乗り込むや、すかさずテイトがエンジンを始動。


 そして、ほどなく車体が浮き上がると共に発進。この周囲に広がる、長閑な牧草地ならびに田園風景の中、それが猛スピードで宙を滑り始めました。


 ふ〜っ…これで安心。


 …でもないようです。


「あなた〜、まだ追いかけてきます〜。しかもヘリコプターで〜」


 その流線型の車内、後部座席のコトが、後ろを振り返りつつ言いました。


「なんと〜」


 ばらばらばらっ…というローター音が響いてくる一方、ちらとテイトがミラーで窺うに、そのヘリコプターの前方下部には機関砲が。まさか相手は、車ごとクスノキファミリー達を吹き飛ばそうとでも言うのでしょうか。


 ちなみに当周辺は、すでにお伝えしたような土地柄の為、車を隠せる場もありません。


 だだだだだだっ…!


 うっと、案の定ヘリコプターが、例の機関砲を撃ってきました。


 どっこい、華麗なハンドルさばきでもってテイトが、間一髪それを回避。


「私とて、かつては『圏央道のハゲタカ』と呼ばれた男だ〜」


 はて、それが良い異名なのかどうかはともかく、


 だだだだだだだだだっ…!


 だだだだだだだだだっ…!


 またも相手が撃ってきました。先よりも激しく。


「…とと〜…ととと〜…」 


 ご覧のように、なんとかテイトは避け続けていますが、でもこれにも限界があるでしょう。


『さあ、もういいかげん観念するんだな』


 と、車内の通信機から、一方的にヘリコプターの乗員の声が響いてきました。


「うぬぬ〜…」


『では、さらばっ。さらばだ…っととと、ひいいいっ…!』


 はて、いったい何事か。いままで勝ち誇っていた相手の声が、急に悲鳴に変わりました。


 なぜか? 


 そういえば、ここら辺り一帯が、急に暗くなってきた様な気がしますが…


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