8

「…ティア星人狩りですか〜。それなら以前に、ニュースなどで見聞きしたことがあります〜」


 ふむふむ…と、テイトが幾度か頷きました。


 ところで、その『ティア星人狩り』とやらについて説明するには、まずは同星人が暮らす《ティア星》について語る必要があるでしょう。


 でですね、いまを遡ること100年ほど前…それは地球人の手でもって、ここ太陽系は天王星と海王星との間に、あらたに発見されました。


 いっそう優れた宇宙船や人工太陽等の開発によって地球人類が、太陽系すべての惑星に移民を果たすようになってから、しばらく後のことです。


 して、そのティア星。月と同じくらいの大きさで、人口は10万人弱と、いずれにせよ規模の小さな星です。


 (これまた新たに発見された)《小太陽》を近くに持つことにより、温暖な気候と豊かな自然に恵まれ、人々は皆、そこで平和な生活を送っています。


 どっこい、そんなティア星が発見されてからというもの、その人々の珍しい肉体(ユアさん参照)を暗に狙う、不届きな地球の者たちが出てきました。


 平和な民族ゆえに、武器など持たぬティア星人を、観賞用その他の目的で売買すべく、密かに『狩り』始めたのです。


 が、それが後に世間に知れ渡るや、地球の国連によって『ティア星人保護法』が制定され、いかなる危害も彼らに加えることは禁止となりました。


 でも、その法の目をかいくぐる形で、いまだティア星人狩りは後を絶たぬのが現状。この度、自前の宇宙船で1人旅を楽しんでいたというユアさんも、危うく被害に遭うところを、あのカプセルにて脱出。そこを、クスノキファミリーに救われた、という訳なのです。


「…で〜、ユアさん〜。これからどうしますか〜。我々は地球のトウキョウという地に向かっているのですが〜」


 テイトが彼女に問いました。


 とはいえ、まさかここからティア星に戻る訳にもいきませんし、このままユアさんも一緒に、地球に行ってもらうしかないでしょう。


「では、地球のゲオルゲ博士という方を、とりあえずお頼りしたいと思うのですが…」


 ユアさんによると、そのゲオルゲ博士なる人物は、主にティア星人について研究する傍ら、それの保護にも力を入れていることで知られる御仁なのだそうです。


「…ただ、その博士のお住まいは、確かヘルギー・・・・という国のブリュリュッセルなる都市にあるのだそうですが、残念ながら、それ以上のことは私には分からないのです」


「そうですか〜。では、コト〜…コックピットへ戻ったら、そのゲオルゲ博士の居所について検索してくれたまえ〜」


「了解です〜」


「で〜、まずはユアさんを、その博士のところへお送りしてから、我々はトウキョウへ戻ることにします〜」


「それは、わざわざありがとうございます。よろしくお願いします」 


 テーブルを前に、ユアさんが、ぺこりと一礼しました。


 地球までは、あともう少しです。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る