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「…しかし、我々と似たような立場の方が、他にもいたとは〜…」


 再びコックピット内。自身の席に着き着き、テイトが呟くように言いました。


 このクスノキファミリーが『人形家族』なら、あのクレオパトラさんは『人形海賊』と言ったところでしょうか。


「宇宙は広いです〜」


「シトの言う通りだわ〜」


 操縦席のシトも、また隣の席のコトも、感心したように頷いています。


「さて〜、ではぼちぼち、交代で少し仮眠を取ろうか〜」


 と、テイトが言い出した矢先のことです。


 ぴんぽろりんっ…ぴんぽろりんっ…いえ〜いっ…


 などという音声が、コトの前のパネルから発せられました。


「あなた〜、救難信号です〜」


 あ、そうだったんですね。その割には、緊張感に欠けるにも程があるような、甚くファニーかつライトな音声でしたが…


「位置を特定〜。可能であれば救助に向かう〜」


 それは、宇宙の海をゆく者のルール。テイトの表情と声が、にわかに引き締ま…ってないですけど、でもそんな雰囲気でお願いします。


「了解〜」


 返答と共にコトが、自身の前のパネルのスイッチを操作し始めました。


 そして、かちゃかちゃかちゃっ…ちーんっ!


「出ました〜。目の前です〜」


 あら、本当です。いつの間にやら、その信号の発信源とおぼしき物体が、正面のガラスのすぐ向こうに漂っています。


 ふむふむ。どうやら、それは1人乗りの避難用カプセルのようです。


 しかし、その後コトが通信機を介して呼びかけても、一向に応答がありません。


「自動で救難信号が出ているのか〜。とにかくロボットアームで収容する〜」


「あいあいさ〜」


 今度はシトの出番。応えるや否や彼女が、その操縦用パネルに並ぶスイッチ類のうち、赤く塗られた1個のボタンを押し込みました。


 すると同じくして、当船首下部にあるハッチがオープン。その先端にマジックハンドを有するロボットアームが、中から迫り出してきました。


 で、まもなくシトの操作により、同カプセルをキャッチ。再び彼女は、その楕円形の物体ごと、先のハッチ内へアームを収めました。


「じゃあ、様子を見に行ってみよう〜」


「はい〜」


 シトとコトの返事が重なりました。


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