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「はい〜、大丈夫です〜。あと100匹いるので〜」


 あいや、計101匹ワ〇ちゃんかい。なら、そのままゼロをクレオパトラさんに差し上げて、早くお引き取り願った方が無難そうです。


「おー、よしよし。じゃあ、一緒に私の船に参ろう」

 

 なんて、口調の割にクレオパトラさんは、やっぱり表情が崩れません。いまなおクールさを保っています。


 そういえば彼女、さっきから喋っているのに、クスノキファミリーよろしく口も動いていないような…


 あ、これはまさか、ひょっとして?


「ところでクレオパトラさん〜、つかぬことを伺いますが、もしやあなたも我々と同じく、人のようでいて実は、そうでない身なのでは〜」

 

 遅ればせ、テイトも気づいたようです。


「ほほう、よく分かりましたね。仰る通り私は、心は人なれど、この身は人形。かつて、若くして不治の病に倒れた為、遥か銀河系は《ドール星》にて、この人形の身体・・・・・を手に入れ、それに生身の脳だけを移植し生き延びた存在なのです」


 ふむ、同じ人形でもクレオパトラさんは、ちょいとクスノキファミリーとは事情もタイプも違うんですね。


 よく聞くに、喉元の辺りから出ているようです。これまたクスノキファミリーと違って、その声に感情があるのも、きっと脳が人間のものだからなのでしょう。


「しかし、『同じく』ということは、船長さん。あなた方も…?」


「はい〜。我々の場合は、ちょっと事情は違いますが、この身が人形なのは確かです〜」


「そうでしたか。いやはや、まったく気づきませなんだ」


 だそうです。いま思えば、お互いに特徴ありありなのに。


「これも何かのご縁でしょうか〜。では、クレオパトラさん〜…よかったら妖怪けむりと地球ゴマも、いくつか一緒に持っていってください〜」


「ありがとうございます。では、お礼と言っては何ですが、私の連絡先をお教えしておきましょう。もし海賊にでも襲われそうになった折には、ご一報ください。すぐに駆けつけお助けしますゆえ…」


 そこで、テイトと握手…って、クレオパトラさん。そういうあなたも、この船を襲った(というほどでもありませんが)海賊なんですけどね。一応。


 ともあれ、ほどなくクレオパトラさんは、ゼロならびに妖怪けむりと地球ゴマ各1ダースずつを手に、当船を後に。クスノキファミリーに見送られながら、自身の海賊船ドンチャリンコン号にて去っていきました。


 にしても、なにより海賊の名が廃りそうなのは、同船名のような気がするのは、それこそ気のせいでしょうか。


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