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「私の船で不足しているものは…」


「しているものは〜」


 テイトを始め、クスノキファミリー揃って、やや乗り出すの図。


「…不足しているものは、カワイイものです」


 はて、いま何とおっしゃいましたか、クレオパトラさん。


「…」

 

 あ、ほら。さすがのクスノキファミリーも、返す言葉を失っちゃってます。


 が、めげずに続けるクレオパトラさん。


「なにせ私は、ずっと宇宙で海賊をやりつつ1人旅をしているもので…まあ、時にそういったものが恋しくなることもあるのです」


 ほほう、海賊と言っても、おひとりでやってらっしゃるんですね。しかも、女性とあれば、そうなる気持ちも分からなくはありません。


 ところで、それこそカワイイことを言いながらもクレオパトラさんは、声色にせよ表情にせよ、さっきからずっとクールなままです。


 たとえば、ここでモジモジでもしようものなら、海賊の名が廃るからでしょうか。


「しかし〜、当船にカワイイものなど、なにもありませんが〜」


 ようやくテイトが返す横で、コトとシトが、互いに顔を見合わせ頷いています。


「でも、これだけの積荷があれば、カワイイもののひとつやふたつ、探せば見つかるのではありませんか」


 確かに、クレオパトラさんの仰る通り、収納庫だけあって当空間は、大小の積荷で一杯ですが…


「いえ〜、当船の積荷のほとんどが、妖怪けむりと地球ゴマですので〜」


 とのことです。

 

 にしても、一体どういう輸送船なのでしょうか。このクスノキ号は。


 と、およそアザトースでも疑問に思う今日この頃、『きゃんきゃんっ』とも『あんあんっ』ともつかぬような動物らしき鳴き声が、どこからか急に響いてきました。


 と思えば、


「まあっ、なんてカワイイ、ワンちゃんなのでしょう」


 尻尾を振り振り、こっちへ近づいてくる犬…といっても、その実、電池で動く小さなオモチャのそれを、しゃがみ込むやクレオパトラさんが抱き上げました。


「ああ〜、それは我々の愛犬のゼロです〜」


「そうですか、そうですか。では、これを頂きたい」


 ここへきて口調こそ変わりましたが、なお表情には変化なし。そんなクレオパトラさんが、光速でテイトに要求してきました。


「だそうだが〜…シト〜、どうする〜」


 日頃、特にゼロを可愛がっているシトに、テイトが尋ねます。


 いやま、やはり愛犬というからには、まさか容易に承諾は出来ないでしょう。

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