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「ふ〜む、なるほど。頭を失くしちゃったのか〜。それで別の物を…ね」


 久美ともども凛が、幾度も小さく頷いています。


「そうなんです〜」


 実を言いますと、先日あの本屋に行った帰り道、月刊『微生物』を手にした喜び(…)から史都は、思わずスキップ。


 ところが、ちょっとつまずいた拍子に転んだら、そのまた拍子に、なんと頭部が外れてしまうというアクシデントが。


 それは、そもそも着脱式。年季のせいかどうか、そのジョイント部が緩んでいたらしく、すっぽ抜けてしまった訳です。


 して、その外れた頭は、道を転がった(怖っ)末に、横の畑に。平坦で開けた場所にも、あら不思議。その後、胴体だけとなった史都(これまた怖っ)が、いくら周辺を探しても見つかりませんでした。


 こうなっては、買い換えるしかなさそうです。


 という訳で、一夜明けた昨日。家族揃って、幾つかの等身大ドールのメーカーに連絡し、とりあえずサイズの合う頭部を探しました。


 結果、とあるメーカーの製造工場にて、父の帝都が譲ってもらってきたのが、いまのこの史都の頭部なのです。


「しかし、不便というか便利というか…」


「う〜ん…そう、ね」


 なんともつかぬ表情。凛も久美も、呟くように言いました。


「以前と同じ頭を、いま作ってもらっているので、しばらくしたら元の顔に戻ります〜」


 だそうです。


「と、そうそう。でも、あのラジカセがなくても喋れるのは、なんでなの」


 あ、そういえばそうですね、久美さん。きょうは、いつものラジカセがどこにも見当たりません。


「それは、この頭部にスピーカーが内蔵されているからです〜。これは、もともと声の出るタイプの頭部らしいので〜…」

 

「声の…出る?」


「はい〜、そうなんです〜」

 

 ほほう、それは一体どんなドールの頭なのでしょうか。まったく想像すらできません(?)が、とにかく史都は、しばしこのまま過ごすことになったのです。


 

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