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 がちゃがちゃっ…


 おや、それは玄関のドアの鍵を開ける音ではありませんか。


「お〜、帰ってきたか〜」


「そのようですね〜」

 

 急ぎラジカセを手にした帝都を先頭に、両親が揃って玄関へ。同じくしてドアが開くや史都が入ってきました。


「遅くなりました〜」


「どこへ行っていたの〜」


 という母からの問いに、


「帰りの電車の中で、つい寝てしまって〜…で、目が覚めたら、終点の駅の忘れ物預かり所に置かれていたので、慌てて帰ってきました〜」


 以前の実体験・・・の下、史都がそう答えました。


 ずっと気を失ったまま動けずにいたから。という本当の理由は、とりあえず告げずに。


「外での居眠りには気をつけろと、いつも言っているじゃないか〜」


 やはり人形だけに、眠ってしまって動かなくなると、先述の実体験・・・のように物扱いされてしまうからです。


「パパごめんなさい〜。てへぺろです~」


 いちおー言っておきますと、顔も声も全然『てへぺろ』じゃありません。

 

「でも、とにかくよかった〜。お腹空いたでしょ、ご飯にしましょ〜」


 湖都が言いました。

 

 ええ、たとえ人形といえど、ご飯は食べるんです。


 家族といえば、一緒に食事、団欒というのが定番なので、何卒ご了承ください。


 

 そして、その夕食後…


「…はっはっは〜、いまは、このコンビが一番だな〜」


「面白いです〜」


「本当に〜」


 一家でお笑い番組を。


 でも、3人揃って笑い声も、笑い声とはいえぬ例の一本調子。おまけに、顔が笑っているのは湖都だけという…


 そんな傍目には不気味な団欒が、以後もしばしの間、ここ楠家では続くのでした。


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