2

 さて、下校の準備をしてから職員室へ。と思って史都が、カバンに教科書やノートを収めていると、


「ねーねー、史都っ。これからカラオケいかない?」


 ほとんど歩くカラオケみたいな娘に、そう声をかけてきたのは、クラスメートの結城凛ゆうきりんです。


「あ〜、凛さん、ごめんなさいです〜。きょうはこの後、やらしい磯野先生に…ではなく、普通の磯野先生に個人授業をしていただく約束ですので〜…」


「え〜、そうなの〜。史都ったら真面目なんだから〜」


 ショートボブのカワイ子ちゃんが、ちょっぴり頬を膨らませます。


「すみませんです〜」


「ま、いいわさ。でも次に誘ったら、絶対きてよね」


「もちろんです〜。いまから楽しみでわくわくします〜」


 わくわく〜…


 わくわく〜…


「そ、そお…よね」


 して見れば、凛の額から頬にかけて、一筋の冷や汗が。

 

 そう、その史都のわくわく感が、やはり相手に伝わらぬ理由もまた、あえて言うまでもありません。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る