第11話 再びスピリッツ
あかどんは、元に戻れたことが余程嬉しかったのでしょう。自分の体中をぐるぐる見回してから、こっそり小川のほうに行って水に自分の姿を映して見ています。それで、やっと自分が完全に紅色に戻っていることを確信して、みどやんのところへ急いで戻ってきました。
ちょうどその時、先ほどの蒼いキツネが煙に包まれて、ピカッと光を放ち、みどやんとそっくりな蒼いタヌキが現れました。
「みどやん、これが、もとのお前さんの姿じゃろう?あかどんと同じやり方で元に戻れるはずじゃ。さあ、こっちへ来るといい。」
目の前の蒼いタヌキが、みどやんの頭に触れると、あかどんのときのように一瞬でもとの蒼い毛色に戻ることができました。そして、その代わりに目の前のタヌキが赤くなりました。
こうして二匹は、元の姿に戻ることができました。が、真っ赤なタヌキと白黒が反転したアナグマのおじいさんそっくりな化身が、まだ目の前に残っています。どうやら、これで終わりではなく。まだ何か続きが残っていそうだと二匹はとっさに思いました。案の定、アナグマのおじいさんが言いました。
「あかどん、みどやん。申し訳ないが、もう一度ここから離れて下がっていてくれないか。」
「はい。わかりました。けど、おじいさんは大丈夫なの?」
後ずさりをしながら、あかどんは心配してこう言いましたが、おじいさんが、
「はははっ。大丈夫じゃ。もう少しで終わるからの。終わったら、帰ってお茶にでもしよう。」
と言って余裕の表情をして見せましたので、ほっとして離れた場所に行って見ていました。
リンゴの木の方へ向き直ったおじいさんが、スピリッツの入ったフラスコを、目の前に出すと中からシュウシュウと霧のようなものが、また吹き出してきて今度は何故か、みどやんそっくりの分身が現れ、おじいさんの分身のとなりに並びました。今正に、色違いの分身と化身の二組が向かい合っている状態です。そして、分身と化身が重なって一つになり、光の球になって木に戻ってゆきました。
おじいさんは、フラスコの蓋を閉めると「ふう。」と一息つきました。
もう既に、目の前のリンゴの木は、普段通りのふつうの木に戻っていましたし、嬉しいことにおじいさんも無事でした。そして何より、あかどんはもとの紅い色に、みどやんはもとの蒼い色に戻ることが出来たのです。
(第12話に続く)
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