第6話 アナグマのおじいさん

「それにしても静かだな。じいさん、いないのかも。なあ、みどやん。」

「深い巣穴だけど、ここから呼べば、多分声は届くと思うよ。」

「おおそうか。じゃあ呼んでみるか。」

 そう言って、あかどんは思い切り息を吸い込んで、

「こんにちはー!アナグマのおじいさーん!おじいさんは、い・ま・す・かー!!」

と、あまりにも大きな声だったので、みどやんは思わず両手で耳を塞ぎました。周りの草むらが、ざわざわっと少し揺れたような気がしました。すると、しばらくして中の方から、

「だれじゃ?わしに、なにか用かな?」

と、ぼそぼそと低いしわがれたような声と一緒に、年老いたアナグマが現れました。どうやら運良く、すぐそばにいたようです。早速、あかどんが聞きました。

「こんにちは…、いや、こんばんは、おじいさん。どうしても、聞きたいことがあって、来たんですけど。」

「え?お前ら、キツネとタヌキじゃろう。にしても、変わった色をしておるの。あっ、気にしておったら、すまんな。悪気はないんじゃよ。ただ、あまりにも珍しかったからつい、言ってしまっただけじゃ。それで、聞きたいことっていうのは何じゃ?」

 今度は、みどやんが聞き返しました。

「あのぉ、突然、毛の色が変わっちゃって、元に戻したいんですけど、いい方法って何かご存じですか?」

「なに?毛の色が急に変わっただと、はてさて困ったのぉ。それは、いつ、どこで、どんなふうにして起こったことなのか、詳しく話してもらわんとわからんな。」

 まず、みどやんが今日、自分に起こったことを丁寧に時間を追って話しました。すると、おじいさんはフムフムとうなずきながら話を聞き終えると、こう言いました。

「お前さんの話は、大体わかったが、そっちのキツネさんにも、話をしてもらった方がよさそうじゃの。」

 そこで、あかどんも、自分の毛色が変わってしまった時のことを丁寧に順序立てて、おじいさんに話しました。おじいさんはフムフムなるほどというようにうなずきながら、あかどんの話を最後までしっかりと聞いてくれました。

「ああ。大体話はわかった。お前さんたちが、色変わりしてしまった場所に、いっしょにわしも行ってみよう。」

「本当ですか?」

「ああ。だが今日は、もう遅い。明日、朝一番で出かけるとしよう。もしよければ、わしのうちに泊まればよい。」

「ありがとうございます。」

「この巣穴には部屋がいくつもある。空いている好きな部屋を使えばいい。ただし、あまり奥には行かない方がいいぞ。中は迷路と同じで、わしも時々わからなくなる時がある。年のせいもあるだろうがな。はっはっは。」

 二匹はおじいさんのご厚意に甘えて、この巣穴で一緒に夜を明かすことにしました。

(第7話に続く)

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