第5話 どうして、こんな目に…
気がつけば、少しずつ辺りは夕暮れの森の景色に近づいていました。小川の中で体が冷え切った二匹は、このままでは風邪でも引いてしまいそうなので、とりあえず水から上がって、体を乾かすことにしました。ぶるぶるっと体を震わせて、毛に含まれた水気を飛ばし、日の当たる場所へ、すたすたと歩いて行きそこでしばらく休んでいました。
そうこうしているうちに、気持ちが少しは落ち着いてきたのでしょうか。あかどんとみどやんは何やら話をし始めました。
「なあ、みどやん。」
「なんだい、あかどん。」
「どうして俺たち、こんな目に遭わなきゃならないんだろう。」
「ああ、僕も今、同じことを考えていたよ。」
「もう、ずっと俺は蒼色で、お前は紅色のままなんだろうなあ。」
「ああ、多分これからずっと、このままなんだろうね。」
「なあ、みどやん。」
「なんだい、あかどん。」
「お前は、それでいいのか?」
「嫌だよ。できれば、もとの色に戻りたい。」
「そうだよな。俺も、もとに戻りたいよ。何か、いい方法はないのかなあ。」
「うーん…あっ、そうだ!」
「何か思いついたか?」
「物知りのアナグマのおじいさんなら何か知っているかもしれない。」
「そうか。アナグマのじいさんか。じゃあ早速、今から行ってみようじゃないか。」
二匹は、ずっとずっと昔からこの森に住んでいるアナグマのところに行ってみることにしました。おじいさんの住む巣穴は、そこからそれほど離れていない、森の中心にある小さな丘の麓にありました。日が沈む前には、なんとか間に合いそうです。ただ、その巣穴は地面に掘られた迷路のようなトンネルですから、果たして、おじいさんに会えるかどうか。保証は全くありませんでした。それでも、何もしないで時間が過ぎていくよりは、ずっとましだと思ったのでしょう。
黙々とひたすら歩いたからでしょうか、思ったより早く、アナグマの巣穴の入り口にたどり着きました。
「あかどん、ここだよ。」
「ああ、確かにここだな。表札もかかってる。」
見れば、巣穴の上から蔓に結ばれた板きれが、ぶら下がっています。辺りはだいぶ暗くなっていましたが、目を凝らせば、板きれには『アナグマ のんべえ』という文字が丁寧に彫られてあるのがわかりました。
(第6話に続く)
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