第三章:それぞれの交流

キューピッド

「ゲーム実況者のクロミネさんに迷惑行為、されてますよね?」


その言葉に殺気が芽生える。


「迷惑行為?」


「立派な迷惑行為でしょ。この間、炎上してたし。今日投稿してたウエディングドレスの写真とかもやばいですよ〜。」


アカウントを変えたのに、この間の炎上も私が仕掛けたものだと気がついていることに一瞬寒気がする。腹立たしい恋のキューピッドだ。今すぐにでも解雇してやりたい。ブロックボタンに手を伸ばしたその瞬間に、新しいメッセージが来た。


「でも安心してください!俺はあなたのことを動画のネタにしたいだけなんで!炎上ネタ取り上げたらバズるかもしれないしw」


「バズるって、私に何も利益がないじゃない」


「ありますよ〜。クロミネさんに思いの丈を伝えられますよ?wというか、クロミネさんがあの時言ってたこと、本当なんですか?w」


「あの時って?」


「炎上した時ですよ〜。これは盗撮された写真だって言ってましたけど俺疑ってるんですよ。本当はあなたと会ったんじゃないかって」


思えば、あの時の炎上は火力が足りなくて、すぐに鎮火していた。クロミネくんが私と会ったことを否定して、写真は盗撮されたものだと言って自らの警戒心の欠如について謝罪したからだ。


彼は嘘をついた。私に会ったことを隠した。


「会ったわ」


「やっぱりw言われっぱなしでいいんですか?」


言われっぱなしであることは気にしていない。クロミネくんは嘘をつかないと活動を続けることができなかった。だから仕方のないことだとわかっていたから。


とはいえ、彼が私の存在を隠したことは悔しかった。配信者としての活動より、私を選んでくれたらどれだけ幸せだったか。そんな気持ちを抱いてしまった。


「悔しいわ」


「ですよねwメンヘラ女だとか、気持ち悪いだとか、色々言われてましたもんねw汚名返上しましょw俺、底辺なんで、彼に届くかどうかは保証できませんけど。憂さ晴らしにはなりますよw」


彼はネットの影響力を甘く見ている。炎上ネタを取り上げることの功罪を知らない。覚悟もない。このクソキューピッド。底辺だろうが大手だろうが火がついてしまえば、同じ結果が待っている。


私だって、破滅するかもしれない。


だけど、それでいい。私にはその覚悟がある。


推しが原因で破滅するのならば、私の人生に悔いはない。


クロミネくんに56されたい。


それが私の願いなのだから。





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