女神さま。「ママ活」に 沼る⑨

 ― 09:45 駅前通り ―


「ちょっと待ってて」


美羽さんはそう言って、近くのアクセサリーショップへ入って行く(タッタッタッ...)



 ― 09:50 駅前通り ―



「その服装に似合いそうなアイテムを買ってきたわよ♡」


その『アイテム』とは?


牡牛のドクロが中央に配置され、その両脇に梵字ぼんじのような文字が彫られてある大きめの数珠。さらに、その両隣に(おそらく男女の)人間のドクロが1つずつ。

そして、とどめ!、とばかりに同じような数珠が両隣に2つずつある


そう。それは、、、

とてつもなく禍々しい“オーラ”を放ったクローム調のネックレスだった


「いや。なんだよ、これ……」

「私が掛けてあげるから、ちょっと後ろを向いてくれない?」


彼女の好意を断るわけにもいかず、しぶしぶうしろを向く



やばい。首にし掛かる重みが半端ないのだが……



そして、行き交う人々が俺の方をチラ見してくる――



――やめろよ。そんな目で見るなよ。いたたまれなくなるだろッ!



「あ、ありがとう。なんだか、勇気が湧き上がってくるみたいだよ」

「そう言ってもらえると嬉しいわ」


彼女の笑顔を見ていると、とても癒されるな

ほんとうに、女神さま なんじゃないかと思えてくるほどだ


「それじゃあ、そろそろ行こうか。待ち合わせに遅刻してしまうからな」

「ちょっと待って! なにか、こう…足りないわね」


そういうと、美羽は、俺のコーデを再びチェックしはじめる



 ― 09:55 駅前通り ―



「わかったわ⁉」

「そうか。それじゃあ、そろそろ行こうか。時間も“ギリギリ”だしな」


「昴は気付かない? あなたに今、足りてないものが?」


――時間だよね~


「今や、陸と海を制する王者となったのよ。あとは、空ね!」

(空!じゃねーよ。もう待ち合わせに、間に合わないだろう)


と、思いつつも笑顔で「いってらっしゃい」を言う俺。なんて寛大なんだろうか…


彼女が再びアクセサリーショップへ入って行くのを見届けると、

俺は【転生遺産】であるバングルを触り、【古銭メダル】のステータスを開示する


 ◇


【冒険者】 Level. 17


スキル:自動攻撃 Lv. 09

      回復 Lv. 04

      反撃 Lv. 05

      先行 Lv. 08

      地図 Lv. 13

      クライミング Lv. 06

      ソロ/キャンプ Lv. 21

       パーティ/キャンプ Lv. 001


特殊スキル:括目かつもくせよ! Lv. 05

      死んだふり Lv. 47


 ◇


――ツッコミどころ満載のステータスが、浮かび上がる



なんで、キャンプを“わざわざ”2つに分けるだよ

これじゃ、前の持ち主が「俺、ぼっちですが何か?」と言ってるようなモンだろッ?!


それに、「特殊スキル 死んだふり Lv. 47 」って、おまえにいったい何があったんだよッ?! なんでそこだけ、レベルが異様に高いんだよッ‼


「あぁ。そういえば、このスキル『括目かつもくせよ!』って、いったい何だったんだろ?

 前回、家で試してみたけど、今ひとつ解らないんだよな」



――よし。待っている間に、ちょっと使ってみるか



そう思って、俺は『スキル』のコマンド決定をする――


すると、どうだろう。身体が自然と動きだした


右人差し指を 蒼天へ と突きあげ、「括目かつもくせよ!」と大きく叫んでしまった



――いや。ダメな奴じゃん、コレッ!



周囲の通行人が、ギョッとして、俺に目を合わせてくる。


1、2、3、4、5


うん。レベルって、これ 秒単位 の事だな…


 ◇


そんな事をやってると、店から美羽さんが出てきた


「あら――」


とそこで、彼女が急に顔をそむける――


ンンン? どうしたんだ?


と声を換えるよりも先に、背後から誰かに声を掛けられた



「ちょっと、いいですか?」



振り向く。そこには、お巡りさんが立っていた……



 ― 10:00 駅前通り ―



つづく


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