女神さま。「ママ活」に 沼る⑧

『オーパーツ』


それらが発見された場所や時代とは まったくそぐわない出土品や加工品などを指す

つまり「場違いな工芸品」という意味だ


その中には【転生遺産】と呼ばれるモノが、0.01%の確率で含まれる


ただし、その存在に気付く者は 美羽さんと、もう1人くらいらしい――



 ― 09:40 本郷3丁目駅前 ―



俺たちはバスに乗車して、駅前通りへとやってきた


バス停では待っているあいだ、ずっと美羽さんにお尻を触られ、

乗車中は、手を恋人繋ぎで乗り過ごした


なぜかって――?


手を繋いでいないと、股にぶらさがっている物を撫でまわされるからだ


――これだから、痴女は困るッ!



……いや。困るというだけで、嫌いじゃないけどさ



そんな読者にもわかりやすい補足を説明していると、

妻がTシャツを“くいくい”と引っ張ってきた


「ねぇ、昴ッ! 見てよ。見て、あっちにいる男の子ッ!

 ちょっと、可愛くない?」

「ぜんぜん」


このとき、俺のトラウマ・スイッチがONになった


これは、――数週間前の話なのだが、


「ねぇ、昴。『美女と野獣』が、実写化したみたいなのよ!

 あなたって、この作品がとても好きだって言ってたわよね!

 だから、BDブルーレイを買ってきてあげたわよ~」


そう、何を隠そう。俺は、大のアニメ好きだ!

子供心に感銘をうけて『美女と野獣』でよく感涙したものだ……


だが、彼女が買ってきたというBDは、パッケージがそれに似せて作ってある、

所謂いわゆる、パチもの系だった


しかもタイトルなんて、似てもいない『痴女とアニマル系男子』だとッ!?


――いや、マジで ビビったわッ‼

よく こんな物を見間違えて買ってきたものだ、と呆れながら見ていると



――【禁18】と記載されてじゃないかッ?!



「俺の思い出、汚すんじゃねぇよッ‼」と騒ぐも、

美羽さんは、口元にいやらしい笑みを浮かべながらも


「大人の解釈が入っただけじゃないかしら?

 それとも、私なんかと映画を見たくないっていう事かしら?」


――しまったッ!


この時の俺は、さすがに悔い改めた。【禁18】と書いてあるからといって、

別に『濃密な男女の肉体関係』とは限らない

きっと暴力的なシーンが強化されて、血が出たりするのだろう…なんて思ってました


 ◇


『痴女とアニマル系男子』


冒頭から獣耳けもみみを付けた、全裸の小動物系男子が、女王様風のコスに身を包んだ女性に、首輪を付けられるところから始まった――


 ◇


慌てて、パッケージ裏を確認すると

『1.犬ミミ~ 2.猫ミミ~ 3.うさミミ~ 4.馬ミミ~』

なんて、チャートが振り分けられてるじゃないかッ――?!


しかも、最後の『馬ミミ』なんて、顔が馬面ウマづらなだけじゃねぇかよッ!?


パケ裏を見て愕然とする俺に、美羽さんは小さく舌打ちをして、

俺に赤い首輪をはめた――


 ◇


そう……。妻が指した男の子は、犬ミミの男優さんに そっくりだった――


こいつ、仕込んだわけじゃあるまいな?

それとも何か? 俺にトラウマを克服しろという神様の啓示的なアレか?


「あら? それは嫉妬かしら?

 やぁねぇ。私が昴以外の男を相手にするとでも思ったの?」


(はい。思ってます)


――とは、さすがに面と向かっては言えないよな……


「そんなんじゃねぇよ!」

「ふふ。照れちゃって、可愛い♡」


そういうと、彼女は、俺の頬を“ぷにぷに”と指先でつついてきた


やばい


こういう『男心をくすぐる仕草』に、どうしてもヤラレテしまう



―――俺は美羽さんに、溺愛できあいだぁあああッ!!!




つづく




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