女神さま。「ママ活」に 沼る⑥


さて――。


美羽が、シャワーを浴びている束の間に、

読者の皆様には、ぼくたちの紹介をしておこうじゃないか



 ◇


はじめまして

ぼくの名前は、女神 昴(めがみ すばる)です


今年で、35歳になります。眼鏡をかけているせいかもしれないけど、

「苦労してそうな顔」って、よく言われています。――結婚してからは、特に――


そして、妻の名前は、女神 美羽(めがみ みう)

年齢は、40歳…なんだけど、彼女の場合は。そぅ……、なんていうのか?


10代で、バレエを習い始め。20代でパルクールに没頭。

30代で、中国拳法の何かしらの大会を連覇。いくつも称号を得ているんだけど…


 えっと――。つまり、何が言いたいのか? と言うと、美羽は、普通じゃない!


とても魅力的な身体をしている。触りたくて、ムラムラするような...


 あ、いや。違うんだッ?! そうじゃない!

えッ。何が違うんだって? 血が沸くもな…いやいやいや。


違わなくもないのだけれども、そうじゃないんだ――



見た目のはなし。つまり、容姿の話をしたかったんだよッ!

(女性の容姿なんて話をすると、コンプライアンス的によろしくは無いんだけど)


彼女の見た目は、20代後半か30歳くらいにしか見えない

並んで歩くと「お若い奥さんね」と、ご近所さんに声を掛けられた事もあるくらい

 


 ◇メッセージが届いております!



わっ。もう、『掲示板』の相手から返事が届いたみたいだ…



なになに?



――とても美しいお顔ですね。女優さんかと思っちゃいました。

 今からでも会いたいです。これからお時間ありますか?――



――くっくっくっくっ。

いまから、貴様ふぜいの男だろうが、我が妻を御尊顔させてやろう

有難く拝顔するがよいッ!――


と、書いて送ろうとしたところで、妻のスリッパが僕の後頭部をスッパ抜いた



「ねぇ、昴。そんなことを書いて送れば、相手は警戒するでしょ?」

「そうかな?」


「ねぇ、昴。情報をくれる人は――」

「神さまです」


「そうよねぇ~。それじゃあ、場所と時間のセッティング。お・ね・が・い♡」

「はい」


「あと、その日本語。間違って書いてるわよ。感情的になると、すぐカッとなるの~

 いい加減に、直してよね。そんなことだから、秘書の仕事をクビになるのよ」


「はい…」


くっそー。誰のせいで、こんなくだらない事をしてると思ってるんだよ…

君がこんな《等身大パネルの少年》を持ち込んでいたのが原因じゃないかッ!



「美羽さん、返信がありました。喫茶サン・レモンで10時に待ち合わせです」



「ありがとう。ほんっとうに、昴は優しいのね。頼りになるわ♡」

「いえ。美羽さまの為なら、お安い御用です」


じゃっかん、イラつく気持ちを抑えながら、僕は事務的に答える

くそッ。美羽さんから『シャンプー』の甘い香りが、耐えられないッ!



「この女は、ぼくの女だ。この女は、ぼくの女だ。この女は、ぼくの女だ!」



そんなことを呪文のように、繰り返しながら妻の谷間をチラ見しようと――



 ――いないッ! どこへッ?!



気付けば、物音を立てずに、玄関の扉を閉めようとする、美羽の姿が目に留まる



「美羽さん! ちょっと、待って! ぼくも ついて行くよ! 」



慌てて、玄関へ走り寄るボクを見て、彼女はへりくだりながら言った



「これは、私がいた事件なのだから、私ひとりで解決するわ」




――こ、こいつッ?! 何気に、露出度のたかい服を着てやがるッ!




「いやいやいやいや。女神さま、これはふたりの事件やまです

 どうか、お気になさらず。僕もいっしょに付いて行きますよッ!」


と、ぼくも同じように遜りながら、美羽に言葉のジャブを喰らわせる



――さぁ、覚悟してもらおうか。美羽さん――



水面から飛び出し、襲い掛かる『メガロドン ※1 』のイラストが載っているTシャツを

精いっぱいに胸を張って、彼女に誇示してみせた



つづく


※1

『メガロドン』…約2300万年前から360万年前の前期中新世から鮮新世にかけて生息していた絶滅種のサメである。日本において、メガロドンの歯の化石は長らく「天狗の爪」とされていた。 参考:ウィキペディアより

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