才能
アメリカの子供達は、それぞれ個性豊かな才能を発揮し、また周りもそれらを惜しみなく賞賛する習慣がついていますが、小学校の学芸会や発表会の時、私はそれを毎回実感していました。
特に、私がよく覚えているのは、小学校6年生の時にやった学芸会です。
お題目は、200年ほど前に東海岸から太平洋まで探検をし帰還した、ルイス・クラーク探検隊を主人公においた、探検隊の一行やネイティブ・アメリカンたち、犬たち(!?)など、学年全員が活躍できる、小学校では定番の出し物「Louis and Clark」です。
私はネイティブ・アメリカンの一人で、衣装は母と相談してハロウィン向けのコスチュームで準備しましたが、皆、思い思いの衣装を自前で準備したり、大道具も自分たちで先生と一緒に作ったり、イベントとしてもとても楽しかったのですが。
主役級の生徒たちや、何かしらのソロ曲を持っている子供達の、朗々とした声、キレのあるダンス。
これらは、素晴らしいチームワークを発揮し、しかも全員が一定以上のレベルに達している代わりに、大人しく控えめな文化的気質のせいか飛び抜けた才能を表現することも比較的ない日本の学校では見かけないレベルの高さでした。
その分、残念ながら日本の学校とは違い、やらなければいけないことから脱落してしまう生徒も一定数いたことも事実です。
日本にも落第生はいるよ、と言われると思うのですが、アメリカは非常に、できる人間とそうでない人間の落差が激しく、そのせいか「loser(負け犬)」というレッテルを、異様なほどに恐れる国民性でした。
そのかわり、敗者復活戦は非常に多く、むしろ、一度脱落してしまった人がカムバックする、というストーリーもアメリカ人の好むところでもありました。
(一度レールを外れると、元に戻るのが非常に困難な日本とは対照的です)
話がずれてしまうのですが、昔流行った「Glee」というドラマは、
「loser(負け犬)である自分も受け入れようよ、それがありのままの自分ならば。
自分の好きなことを貫いていこう」
というメッセージが、そういうアメリカの国民性を考えて、エポックメイキングだったのですが……。
何の話だったか、学芸会でした。
特に私や皆が大好きだったのが、 ナポレオンに扮した少年(名前は忘れてしまいました)が、フランス国家の替え歌を舞台中、いえ会場中に響き渡るような声量の美声で歌う姿です。
もともと元気で明るい少年だったので、学年の中心的人物だったのですが、その学芸会の際はまさに、学年のヒーローとして、飛び抜けた存在感を発揮していました。
どんな時でも、生徒たちが、人が、自分の能力を発揮して、輝いている姿というのは見ていて楽しいものです。
さらには、それぞれの才能を尊重して素直に賞賛するという姿勢が身についており、そしてもっと素晴らしいのは、そうして褒められたことを素直に受け止めるという姿勢がそこにはありました。
謙遜も美徳かもしれないのですが、自慢する人たちを敬遠するよりは、人の長所を素直に誉めて、その言葉を素直に受け止める、そうしてお互いを伸ばし合う、そのキャッチボールの方が、私は個人的に好きです。
(謙遜は、自分はまだまだ成長できる、という向上心や、チームワークを大切にする心の表れだとも思いますが)
例えば、体育の授業で誰よりも早くかけっこをした子供。
算数のテストでいつも100点を取る常連さん。
歌の発表会で、カーペンターズの「Rainbow Connection」を歌い、大喝采を浴びたお姉さん。
どんな子供もそれぞれ個性を持っているものですが、不思議とそれを自分たちで素直に表現できる、むしろしなければならないというプレッシャーさえあり、それらを乗り越えた姿は子供心にとてもかっこよく見えたものです。
私はというと?
図工の授業で、鉛筆書きで描いた絵を見た周りの同級生たちに「すごい!」「あなたは天才ね!」と絶賛されたのですが。
日本人は小さいころからお絵描きをする習慣があるので、特に絵が得意でない私も、同級生から見るととても繊細で上手に見えたようですが、それは描き慣れた鉛筆書きまで。
絵の具で色付けした時には誰も何も言わなかった、という悲しい出来事がありました……。
いいものはとてもいいと褒め称え、残念ながら特に魅力を感じないものにはノーコメント、というのもとてもアメリカ人らしい素直な気質ですね。
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