初登校


記憶が定かでないのですが、おそらく親のどちらかが付き添って登校した先には、校長先生と、私と妹それぞれの担任の先生が待っていました。

(たぶん、もう片方は中学校に転入する姉に付き添ったんだと思います)

どちらも女性で、私の担任の先生は日系2世のMrs.VanHoveという、テキパキしていて、キレイで明るい先生でした。

ここで妹を含む家族とはお別れです。後々妹とこの話をした時、「ハチミツちゃん、すごい不安そうな顔してた」とのことでしたが、その通り、緊張しすぎて体がカチコチになっていました。

教室に入ると、「○○○○」なにかを言われて、机と椅子を先生が指さします。

(ここに座って待ってろってことかな?)そう思い座ると、先生がウンウンと頷きました。

そのまま、ぼーっと座って待っていると、だんだんと色々な生徒が入ってきます。

皆、不思議そうな顔をして私を見ました。

「○○○○?」「○○○○」また宇宙語を話しています。たぶん、「新しい

生徒かな?」「じゃない?」といった会話を交わしているようです。


それにしても、当たり前なのですが皆、肌や髪の毛や目の色が、本当にバラエティ豊かでした。日本の小学校で見ていたような(つまり私のような)アジア系の生徒も多くいましたが、今覚えているだけでも、多種多様の人種の子どもたちが入り混じっており、例えば印象的だったのは、インド系の焦げ茶色の肌色の、明るく頭も良い人気者の女の子、活発で元気いっぱいの背の高いブロンドの女の子、栗色の長い髪のネイティブ・アメリカンのハーフの女の子、大きな体格と部屋中に響くような美しい歌声を持つ茶色い丸い目をした男の子や、某元大統領と同じ名前を持つ砂色の髪の少年、マイコ(Michael)と呼ばれていたブルネットの髪とまつ毛が長く穏やかな風貌の男の子、まるでこぼれ落ちそうな大きな瞳を持つ日系の美少女...今思い出すだけでもさまざまです。

今まで生きてきた世界とは住む世界が違うのだという実感を新たにしながら、小さくなって座って授業が始まるのを待ちました。


しばらくしてから、隣の席に美菜子ちゃんという女の子が隣に来て、色々と日本語で話しかけてくれます。

美菜子ちゃんは私の半年前ほどにロサンゼルスに来たそうで、同じ日本人で、とても信頼できる子だから、と私の席の隣を美菜子ちゃんにしたそうです。

この美菜子ちゃんで、一つ覚えていることは、Mrs.VanHoveがよく「actually(実際のところ)」と前置きしてから本題に入ることが多かったので、美菜子ちゃんに「actuallyってどういう意味?」と聞いたところ、「『えーっと、』って意味だよ」と答えてくれたことです。

辞書で調べたような、正確な答えともいえないのに、ニュアンスの意味ではむしろ一番正しい答えです。

特に英語力を事前に身につけることもないまま、小学生で海外に渡り、自分一人の力で語学力を身につけていた彼女らしい返事だと今でも懐かしく思い出します。


そんな美菜子ちゃんと会話をしながらチャイムの音が鳴るのを聴くと、美菜子ちゃん含む生徒たちが立ち上がりました。


I pledge allegiance to the Flag

Of the United States of America,

And to the Republic for which it stands

One nation, under god, indivisible, with liberty and justice for all.


また、宇宙語です。けれど、右手を左胸の上に置き、暗唱するみんなの姿は、なんと言えばいいのか、神聖な誓いのような、おごそかな雰囲気でした。


私はアメリカ合衆国国旗と、

それが象徴する、万民のための自由と正義を備えた、

神のもとの分割すべからざる一国家である共和国に、忠誠を誓います。


多民族国家であるアメリカは、様々なバックグラウンドを持つ市民が混在します。

いわゆる、人種のサラダボウルと呼ばれる所以ですが、その一方でそんな市民たちが一つになるためには、なにか共通認識が必要なことも事実です。それらの一つが、アメリカ国旗であり、この「Pledge of allegiance - 忠誠の誓い」なのだということでしょう。


第二言語を学ぶときはいつでもそうですが、私は、私や美菜子ちゃん、そして妹たちは、多くの小学校で唱和されるこのpledge of allegianceを、まるで歌を覚えるようにまず耳で覚えてから、その後に単語ひとつひとつの意味を学び、覚えていったものです。

そのせいもあるのか、私は特にこのpledge of allegianceを今も時々懐かしく思い出すことがあります。


余談ですが、私はアメリカの国歌も大好きです。これは独立戦争の時期 (後述:1814年の米英戦争の時期だそうです。勘違いをしていました) 作詞家が砲弾の中にそびえ立つ国旗を見た時の感動を歌詞にしたもので、メロディラインも非常にアメリカ人らしい、前向きで明るくかつ荘厳な、様々な国歌の中でも、群を抜いて良い歌だと思っています。


好きな部分も、逆にそうでない部分もたくさんあるアメリカという国ですが、国歌と国旗のかっこよさは、他の国々に自慢できると勝手に思っております。


O say can you see

by the dawn’s early light

What so proudly we hailed

as the twilight last gleaming


Whose broad stripes and bright stars,

through the perilous light

O’er the ramparts we watched

were so gallantly streaming?


And the rockets’ red glare,

The bombs bursting in air,

Gave proof through the light

that our flag was still there!


O say does that star-spangled

Banner yet wave

O’er the land of the free

and the home of the brave!

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