第4話 - メールとチャット -



「ふぅ〜…… 疲れたな」


HIROの店から帰って来た、と言うより寄り道をして。

宴の盛り上がりも束の間、哲矢の親から電話があって親戚のおじちゃんが交通事故をして危篤の知らせだった。その電話から店内の空気が一変、カウンターのみならず店内全域に宴の空気がお通夜となり、これはまずいと哲矢を乗せ直ぐに親戚のおじちゃん家へ向かい哲矢を送り届けた。


「大丈夫かなぁ? …… さッ始めるか!」


哲矢を心配しながらも、ボクは帰宅して早々パソコンの電源を点けた。

画面を目の前に、今日の昼間哲矢に言われた事を思い出す……


「いいかー?これだけは守ってくれ!」

「うん、何をー?」

「パソコンは用意できたし、インターネットにも繋がった…… しかしだ?

仮に繋げてる、繋がった事を確認しただけなんだぞ?今は、専門誌の付録にあったプロバイダを選んで簡単に繋げてるから、電話代は従量制なんだ?わかる??」

「あぁー、何となく」

「インターネットは電話回線を利用している、だから繋げてる時って電話を使ってるのと同じなんだ!電話代がかかるんだ!」

「あッそういうことか!」

「取り敢えず、無茶に長く接続しない事だ

。一応、電話会社にも申し込んでテレホーダイってのを使えるまで1日の接続時間だけ、マメにメモしておく事。そうしないと高くつくからな?」

「あぁわかったよ、仮に1時間インターネットやるといくらになる?」

「そうだなぁー……

ザッとみても2000円かな?」

「えーッ?!そんなにも……

わかった気をつけるよ!」

「OK!じゃあ一度切るぞ? 」

「うん。因みに哲矢ん家はその〜ホーダイってのと、月のプロバイダ代でいくら払ってるん?」

「うちかぁー、テレホーダイが3,000円とローカルで近くにプロバイダ開設したからそっちが2500円、合わせて5,500円だな」

「そかそかー

テレホーダイって一日中出来るのか?」

「いや、23時〜翌8時までって決まってるんだ、だから平日は前より寝不足になるから、休み前は朝のギリギリまで繋げてるよ!

これなら元は取れてると思うしね」

「なーるへそ、ボクもそうするかなぁー」


哲矢先生のお陰で、パソコンは勿論インターネット関連のことにも詳しくなっていった。だけど、申し込んでから2週間後でないとテレホーダイというものは使えない。


「まぁ、少しだけなら良いだろう…… 」


今日の復習だと思い、風呂を済ませて寝る前に少しだけインターネットへ繋げてみたのだった……

「おっ!こんな所もあるのかぁー……

あっこれ探してたんだよなー……

わぁー音楽も聴けるやん、スゲェー!…… 」


ほら、言わんこっちゃーない。

かれこれ2時間くらいインターネットを繋いでいた。ふと見た時計は夜明け前の時刻、我に返りこの日はもう止めて寝ることにしたのだった…… 。


その後、一週間経った週末の事、

早朝に電話が鳴り、誰かと思えば哲矢からだった。どうやらおじちゃんの一命は取り留めたらしい、良かった。哲矢の安堵の声でボクも心配ごとが吹っ飛んだ。

哲矢から連絡が無かった一週間は、独学でネット上を色々と散策したのだった。

もちろんプロバイダも良いところを見つけて契約した。

メール設定も軽く終わり、ついでにネット界隈で話題のピンクのクマピーがメールを運んでくれるソフトをインストール、コレを使うには相手が居ないと使えない。クマピーフレンド専用の募集掲示板と言うサイトも見つけ書き込んだ。このクマピーは、お遣いの様にメール送信すると返事と一緒に帰って来たり、受信中何かアイテムを拾って来たり貰って来たりする。仲良くなると友だちを部屋にまで連れてくる

ただそれだけのメールソフトなんだが流行っているらしいので便乗した。

その掲示板には "チャットルーム" という場所でも、メール意外に交流できるらしいことを知る。チャット…… 未知のワードだ、他のパソコン用語やネット用語よりも何か引っかかって居たので、そのチャットを運営しているサイトも検索して幾つかお気に入りにしていた。


「おぅ!居るかー?

悪かったな、おじちゃんの一件」


「おぅ哲矢、元気そうだな!

良かったな、おじちゃん無事で」


週末何度かの訪問が無くなって、この日は一週間ぶりの再会。大袈裟だけど、今まで在るものが無くなると何か気持ち的に有耶無耶になる。友だちとは、そんなもんなんだろうか?


「どう?あれから何か新しいの見つけたか?まさか、繋げっぱなしでやりっ放しじゃないだろうな?」

「言われた通りにしてるよ先生!」

「そか、それならOK!」

「あ、そうそうーコレ!

今、話題のピンクのクマピーのソフト持って来てやったぞーッ」

「あーソレ、もう入れた」

「お?早ぇーなー

世の中の波に乗ってるやーん、グッドです」

「当然さっハハハッ」


お互いに親指を突き出し、友との再会の和らいだ空気に溢れた時間となった。


「なぁ?

哲矢はチャットってやった事あんのか?」

「あぁ、姉さん夫婦がパソコンやり始めた時にちょこっとだけな。それがどうしたん?」

「いや、また知らない世界だからねー

ちと聞いてみただけだよ」

「そっか、チャットもウェブかソフトインストールしてやり取りできるのがあるからなぁー」

「え、そうなの?

ウェブの方ならいくつか覗いてるけど、ソフトのは知らんかったなーサンキュー!」

「おぅ。多分ソフトのは無料でインストール出来るみたいだぞ、クマピーみたいに。音声でも送れてちょっとした電話みたいになるらしい、まぁ音声の送受信に時差もあるし、トランシーバーみたいな使い方らしいけどなー」

「そかそかーなるへそくん」


この時ボクは、哲矢には言えなかった。

散策して見つけ出したチャットルームにハマって既に毎晩何人かの、哲矢みたいなパソコン通の東京の人やら、歳の近い女の子ともチャットしている事を。もうチャッターとしてデビューは済ませて居るし、オフ会参加も目指している……


哲矢には、もう少し経ってから話そうかな?

テレホーダイが使えるまであと3日だからな……


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