002-転生したら勘違い悪役令嬢になっておりましたの!?~2
「~おっほん。ミレーユ、そろそろいいか?」
「よろしくてよ!」
いけませんわ。気合いを入れすぎて天井を指差してポーズしてしまいました。
さらにお父様に高飛車語を使ってしまいましたわ。
「ミレーユ。先も言ったように殿下との件、頼んだぞ」
「わかりましたわ」
「存分に楽しんでいくといい。なにか問題があればセバスチャンに聞くといい」
お父様が右手を少し上げ、指を鳴らすと執務室の扉が開き、銀髪の少年が入ってくる。
「旦那様。失礼いたします。」
「セバス。トパーズの首飾りとそれにあうドレスをお父様に買っていただくの、それに似合うポーチを選びたいのよろしくて?」
「お部屋に並べております」
執事というのは本当になんでもお見通しなのかしら。
執事には大別して2種類あるというのは公式ガイド本で見たことがございますの。
一方は、己の一生を主人に捧げ、執事でいる限り独り身を貫くもの。
もう一方は、既存の子弟が教育の一環としてある程度の年齢になるまで勤めるもの。
今わたくしの後ろを歩いているセバスチャンがそのどちらに属するかは、
主であるわたくしでさえ知らされていない。
セバスはどちらに属するのかしら。
部屋に入り、ソファに腰掛けると膝の上に布がかけられる。
視線を動かすとセバスと目が合った。
銀髪の少年。物心ついた頃からわたくしに仕えていた男の子。
顔つきは幼さを残すというのに、物腰は大人びている。
彼は慣れた手付きで膝掛けの皺を伸ばしている。
「お嬢様。ご不要でしたか?」
「いえ、そんなことなくってよ。」
いけませんわ。この素っ気ない態度がわたくしを悪役令嬢と勘違いさせておりますのよ。
わたくしは膝掛けを左手でゆっくりと撫でる。
「暖かいですわ。ありがとう。セバス」
「光栄でございます」
少年執事は右手を胸に当て、礼をする。
こんな芝居がかった仕草でも様になっているのはイケメンのズルいところですわね。
あと数年もすればV系のロックバンドにでも入れそうな美形なのに
子犬のような性質も兼ね備えているなんて…恐ろしい子。
「なにか気になることでもあったの?」
「いえ、お掛けしたらお嬢様と目が合いましたのでご不満な点でもあるのかと思いまして」
この世界ではエアコンなどないのですから、温度調節は布と毛皮、火とあとひとつ、魔法で行いますの。
だから春先の暖かいこの季節であっても、普段着は薄着をして、膝掛けや上着などで調節をするのが一般的ですわ。
そして貴族の令嬢に膝掛けを掛けるのはキザな殿方か、使用人ですの。
しかしーー
「そんな風に思われるほど、わたくしはあなたと目を合わせていなかったのですね」
ふと思ったことが口から出ていたことにミレーユは気がつかなかった。
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