【完結】祝炎の英雄

第一章 唐紅の一族

焔皇国えんこうこく 


 神々と共に生きる国、焔皇国。

 人、龍人族、獣人族の三つの種族から成る緑豊かなその国は、神によって封じられた国だった。

 その中でも特に力を持つとされるのは、人の中に混ざる不死の一族と言われる者達である。神の血を継ぐとされるそのもの達は、国を纏める存在として絶大なる権威を誇っていた。


 らんしょううん省、たん省、おう省、ぼく省、かん省、きん省、ろく省、そして、中央であるほう省の九つの省に分かれた国は、八つの一族によって治められ、中央である鳳省を、神農しんのうと、その血族であるきょう一族が中心となって治めていた。

 不可視なる神々の力の影響を受けながらも、焔皇国炎帝えんてい神農しんのうの治世により平和は保たれていた。


 だが、突如として平時の世は崩れた。

 獣の姿をした妖魔が陰より湧き出る様になり、更には上位の存在である業魔が世を混沌へと貶めた。

 妖魔が陰より生まれるのなら、業魔は人から生まれた。神々の陰の影響により、人の身が業魔と成る。恐ろしいまでに大きく力のある存在は人々を苦しめた。

 人を、村を、街を襲い、世は混乱に陥った。


 混沌の中、神農は一人の男に命令を下した。彼は、天命を受け祝炎の力を神より授かった者。


 彼の名は、きょう祝融しゅくゆう

 皇帝、神農の八番目の孫。


 姜一族特有の大柄な体躯のその身に、炎を纏わせ戦う姿は、闘神を思わせた。戦うために生まれた姿に、誰もが息を呑む。

 彼が力を使うと大地が燃えるかと思う程に、空気が熱を帯びた。業魔に立ち向かう彼の姿は勇ましく恐怖は無い。


 その異能ちからは、神からの祝福とされると共に、使命を授かると言われた。

 使命が何かは自分で考えるより無い。


 これは、英雄と呼ばれた男と使命を共にした者達の物語りである。

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